落合打撃からもヒント!東大野球部新監督の元中日・井手峻氏は42連敗中の東京6大学最弱チームをどう改革するのか?
理想とするのは、オリックス、阪神で活躍した左腕“星の王子様”こと星野伸之氏の投球スタイルだ。ストレートは130キロ台でカーブが100キロ前後。東大のメンバーとそう変わらぬポテンシャルだがプロで通用した。 「落合が一番速く感じるストレートが星野だと言っていた。腕、ボールの出どころが打者から見えないフォームとストレートのスピン。そして緩急だね」 “ライン“をキープしてのコントロールは50歳を超えて現役を続けた山本昌氏が手本。 「昌もストレートにスピードはないがコントロールは、まさに針の穴に糸を通す、それでアウトローのピカ一。バッターが見逃すんだよね」 井手監督は、こう続ける。 「杉浦忠さんがそうだった。名人と呼ばれる人は、力を入れているように見えない。ひょいっと投げる」 もちろん東大らしい「頭を使った野球」も追求したい。 「IDも使う。教え込むよ、配球も。ただし頭を使った野球はプレーに余裕がないとできない」 先日、元中日、楽天で活躍した山崎武司氏のラジオ番組に電話で出演し「なんとか打たせなたいんだだけど」と相談。山崎氏から「楽天時代にノムさん(野村克也)から教えられ40歳を超え本塁打王を取った」と配球を読むことを薦められたという。 「井手さん!投げてくる可能性のない球を消すんですよ。打つ確率が高まります」 75歳。「年齢への不安はあるよ。だからノックはやらない、無理はしない(笑)。でも大久保が助監督としてサポートしてくれているかたね。どれだけ気力を蓄えられるか、そこだと思う」 1981年の春に早慶を倒して優勝争いに参戦「赤門旋風」を巻き起こしたチームの主将だった大久保裕氏(61)が、助監督に就任。井手監督をサポートしている。 「褒めて伸ばす」が、井手監督の中日の指導者時代から変わらぬスタンスだ。 中日のコーチ時代に井手監督が怒っているのを見たことがない。新宿高のコーチ時代、投手が打たれても井手氏が怒らないため「井手さんは褒めてばかりで困る」と監督にたしなめられたことがあるという。 「アプローチの仕方はプロのコーチ時代からあまり変えていない。怒るのが下手なんだな。星野と逆だからね」 闘将、故・星野仙一氏が監督時代、井手監督はフロントだったが、「選手はプレッシャーをかけ続けないと伸びない」との持論を聞かされたという。 「でも僕にはそれはできないんだな。今の時代、東大に来るような若い人にそれは通じない。納得しないとついてこないからね」 チームには学生コーチがいて指導の分業制が整っていて練習メニューも学生が作る。 「でも、こう見えて何でもやりたい性分。任すけど全部に口を出す」