ドイツのサステナブルな街を巡る② 「水力登山鉄道」がある温泉街・ヴィースバーデン
コッホブルンネンの近くに設置されている、ローマ風の飲泉パビリオン。胃腸によい効能があるといわれており、ペットボトル持参で汲みに来る地元の人たちも多い。手ですくって飲んでみると、思わず眉間にシワが寄るほど苦くてしょっぱい! 温泉分析書によると、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、硫黄が多く含まれているという。日本人にはなじみのある泉質だが、それにしてもこの味は……。
街なかには高級菓子店やブティック、レストラン、カフェバーなどがあり、眺めつつ歩くだけでも楽しい。街の半分以上が緑地帯というこの街は、瀟洒(しょうしゃ)な建物の間に並木道が続き、公園や緑地が多い緑のオアシス。水鳥が羽を休める小川のせせらぎや、木々の葉擦れ音を耳にすれば、ここが都会だということを忘れてしまう。
いまやドイツでもここだけの水力ケーブルカー
街の中心から北へ、公園内を30分ほど歩くと(バスでは約10分)、ケーブルカーの山麓駅がある。1888 年から続くネロベルク鉄道は、世界でも珍しい「水の重さ」で動く超エコ発想のケーブルカーだ。その仕組みはいたってシンプル。井戸の釣瓶のように2台の車両がケーブルで連結されており、山頂駅にある車両には最大約7000リットルの水が注入され、重みでその車両が下の山麓駅へと降りる。すると同時に、山麓駅にあった車両が山頂駅まで引き上げられるというもの。 この仕組みはウォーターバラストと呼ばれる、水の重力を利用した古典的なものだ。電力による運行制御が実施される以前のケーブルカーでは主流のシステムだった。いまはドイツでもここにしか残っておらず、19世紀の先進技術を伝える貴重な存在となっている。地元でも人気のようで、私が乗るときには、地元の子どもたちがちょうど課外授業で訪れていた。子どもたちと同乗して、標高約245mのネロ山の頂を目指す。
急勾配を一気に上り、3分ほどで山頂に到着。そこには青々とした芝生が広がり、ピクニックや散歩を楽しむ地元民の憩いの場となっていた。木の上を歩くような、本格的アスレチック施設も人気のようだ。山頂から少し下がったところにあるテラスからは、山の斜面に広がるぶどう畑とヴィースバーデンの素晴らしい景色を一望できる。