日本の党首討論がライブ検証されないのはなぜ 選挙に関する日米台のファクトチェック比較【解説】
日本の党首討論は
一方で日本。総選挙をめぐる党首討論会が相次いで実施されたが、10月19日現在、日本ファクトチェックセンター(JFC)を含めて主だったメディアやファクトチェック団体から党首発言に関する検証記事は出ていない。今後出てくる可能性はあるが、アメリカや台湾とは対照的だ。 ファクトチェック分野で、日本はもともと出遅れていた。国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証を受けた団体が日本で最初に誕生したのは2023年。わずか1年前のことだ。アメリカではIFCN認証がない大手メディアもファクトチェックを実践しているが、日本での事例は少ない。 JFCもIFCN認証を受けている団体の一つだ。総選挙に関しては10月19日までに14本の検証や解説の記事を出した。しかし、党首討論に関しては、検証記事を出していない。 選挙 - 日本ファクトチェックセンター (JFC)(関連記事を参照ください) 筆者(古田)は複数の党首討論会を文字起こしして内容を精査した。事前に研究機関にも相談をし、疑わしい主張があれば検証をする準備は進めていた。だが、党首の発言には、ファクトチェックの対象となりうる「客観的に検証可能な事実」で、疑わしいと思える箇所が少なかった。 ニコニコニュースで配信された【衆院選2024】ネット党首討論を例に見てみる。自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党、参政党の9党首が参加し、1時間20分にわたって経済政策と憲法改正について議論した。 テレビ各局の党首討論よりも時間が長く、日本記者クラブでの党首討論よりも党首間でお互いに質問と回答を交わす機会は多かった。しかし、9党首全員に発言機会を与えるために、発言時間が1回につき60秒か30秒と短く区切られていた。 これは他メディアなどの党首討論でも同じ傾向だ。アメリカの討論会は2人、台湾は3人なのに比べて、日本は登壇者が多すぎるために発言の多くは自分たちの政策の概要にとどまり、他者への質問や回答も深く掘り下げていく時間的な余裕がない。 お互いがポイントを絞って、自分たちの政策のアピールを優先させる場において、わざわざ明らかに事実と異なる発言をすることは合理的とは思えない。ハリス氏や台湾総統選の3候補の発言に大きな間違いが少ないのはそういう理由だろう。 むしろ、トランプ氏のように公然と誤った発言を繰り返す方が例外的とも言える。