日本の党首討論がライブ検証されないのはなぜ 選挙に関する日米台のファクトチェック比較【解説】
まずはトランプ氏の検証された発言:
「私達が経験しているインフレは、ほとんど誰も見たことがないものだ。おそらく、我が国史上最悪のインフレだ」=誤り。インフレ率は2022年に9%まで上昇したが、現在は3%を下回る。1980年は12.5%、1979年は13.3%、1946年は18.1%。 「私たちの国には、刑務所や拘置所や精神病院から何百万人もの人々が流入している」=まったく根拠がない。 「私はわが国史上、最も偉大な経済のひとつを作り上げた。最高の経済だった」=誤り。GDPや失業率などの指標を比較すると、トランプ政権が最高とは言えない。
次にハリス氏の検証された発言:
「エコノミストたちは、トランプ氏の消費税は中流家庭に年間約4000ドルの負担増になると言っている」=高い見積もりの可能性。3900ドルやそれ以上という専門家もいるが、それより低い見積もりもある。 「私は2020年に、採掘を禁止するつもりはないと明言した。私はアメリカの副大統領として、採掘を禁止したことはありません」=印象操作。2020年の大統領選のときにハリス氏は採掘に反対の立場だった。 「彼(トランプ氏)がプーチンについて『やりたい放題やればいい』と言い、プーチンがウクライナに攻め入ったのは有名な話だ」=部分的な誤り。トランプ氏はこの文脈で「やりたい放題やればいい」と言ったわけではない。 これらの検証を見ると、ハリス氏の誤りも具体的に指摘していることがわかる。冒頭で紹介した他メディアのファクトチェックも同様だ。ハリス氏の間違いを指摘する部分もあるが、トランプ氏の発言の誤りをより多く指摘している。 英メディアのガーディアンに至っては「トランプ氏の主張の検証」と題してその誤りを焦点をファクトチェックしている。
台湾総統選のファクトチェックは
2024年1月に投開票された台湾の総統選はどうか。台湾ファクトチェックセンターは候補者討論会をリアルタイムで検証した。3人の候補者発言を合計23箇所にわたって検証している。 【2024總統辯論會查核結果一次看】ー台灣事實查核中心 23の検証のうち、7つは発言を「正確」と判定した。残りの16は「データは一致しているが推論が単純化しすぎ」「データは一致しているが部分的な情報しか得られない」「重要な前提や事実が隠されている」「一部が確認したデータと一致しない」などと不正確な点を指摘している。 しかし、アメリカにおけるトランプ氏のように「まったく根拠がない」というような判定は見当たらない。むしろ、ハリス氏への検証と同じように、一部に間違いや不正確な部分があるという指摘が主だ。