「9割以上が赤字」の衝撃…いま「路線バス事業者」が直面している「厳しすぎる現実」
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
乗り合いバス事業者は「99.6%が赤字」
廃線が浮上している赤字ローカル線の沿線自治体などからは鉄道存続を求める声が上がっている。高校生や高齢者の足となっているだけでなく、廃線が引き金となって沿線人口の流出が加速するのではないかとの懸念があるためだ。 「赤字ローカル線を単体で考えるのではなく、鉄道ネットワークとして捉えるべきだ」との主張も聞かれる。とはいえ、赤字ローカル線を支えてきた「内部補助」という根底すら破綻し始めている以上、JR側も簡単には譲れないだろう。 赤字ローカル線の存続を熱望する地域では、バス高速輸送システム(BRT)や路線バスへの転換ではなく、地方自治体などが鉄道会社に代わって施設や車両を保有し、鉄道会社は運行のみを担う「上下分離方式」を模索する動きもある。 税金を投入して「上下分離方式」に移行すれば、収支は一時的に改善するかもしれないが、その多くは時間稼ぎに終わる。先述したように問題の本質は地域住民の減少に伴う利用者不足である。鉄道の存続であろうが、路線バスなどへの転換だろうが、需要不足を起こしている状況に違いはない。 国交省の「2022年版交通政策白書」によれば、2020年度は乗り合いバス事業者の99.6%が赤字であった。同年度の廃止キロ数は鉄道が146.6キロメートルに対し、路線バスは1543キロメートルだ。路線バスの廃止キロ数は2010~2020年度の累計で1万3845キロメートルに及ぶ。 観光客を含めたその地域の商圏人口(周辺人口)が、運行事業者の存続し得る必要数に届かなくなれば公共交通機関は維持できない。乗客が増えなければ、鉄道かバスかにかかわらず結局は廃止の道が待っている。 鉄道廃線に伴う代替バス路線までもが赤字続きで廃止になるケースがすでに出てきている現実を直視しなければならない。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)