4度目の結婚は80歳、友人の妻を寝取るのがやめられない…ノーベル賞受賞者の異常な性癖
完璧主義、依存、頑固、コンプレックスが強い。どんな人にも、こうした性質はあるものです。しかし、それが「異常心理」へとつながる第一歩だとしたら……? 精神科医・岡田尊司さんが、私たちの心の中にひそむ「異常心理」を解き明かす。『あなたの中の異常心理』から一部を抜粋してご紹介します。
異性は狩りの獲物のようなもの
イギリスの哲学者で、平和活動などでも活躍し、ノーベル文学賞の受賞者でもあるバートランド・ラッセルは、華々しい公的生活とは裏腹に、私生活は乱脈を極め、スキャンダルすれすれのきわどい綱渡りを繰り返した。 4度結婚したが、4度目の結婚は80歳のときであったことからも知れるように、ラッセルは性豪であった。実際、そのことを自慢げに話すことがあり、ノーベル賞受賞者らしからぬ発言に周囲が眉をひそめることも再々だった。 ラッセルは、性欲と支配欲が結びついた男根ナルシズムと呼ばれるものに取り憑かれていたようだ。 このタイプの人にとっては、魅力的な異性は、狩りの獲物のようなものであり、手に入れる過程に醍醐味があり、征服対象である異性自体に関心があるわけではない。征服すること自体が、自己目的化していると言ってもいいだろう。 その結果、次々と異性を自分のものにしようとエネルギーを投入するが、ひとたび手に入れてしまうと、急に熱は冷めてしまう。必然的に、恋人や配偶者との関係は不安定なものとなる。 ラッセルが好んで関係したのは、友人や知人の妻であった。色事の世界では、男にとって一番美味な女性は人妻だとも言われるが、ラッセルは、姦通の魔力に取り憑かれてしまったように、次から次に知人の妻に手を付けていった。 哲学者のホワイトヘッドの妻も、詩人のT・S・エリオットの妻も、ラッセルの餌食(えじき)となった。それによって、家庭を壊されたり、精神に異常をきたした犠牲者も数多いた。 ラッセルが一人の女性と安定した愛着関係を築けなかったのには、幼い頃の体験がかかわっていただろう。 母親は、彼がまだ2歳のときに病死したのであるが、亡くなる前から、両親の間の愛情はやや特異なものであった。夫妻は、上の息子の家庭教師をしていた男性が、結核のため独身生活を送っていることを気の毒に思い、若い欲望を満たせるように妻の体の提供を申し出たのである。 最近でこそ「セックス・ボランティア」ということが真面目に論じられたりするが、何しろ140年も前のことである。いくら進歩的な合理主義者であるとはいえ、道徳のうるさいヴィクトリア朝の時代に、貴族の令夫人が、夫以外の男性に進んで体を差し出すというのは奇想天外なことで、むしろ、妻と家庭教師の懇(ねんご)ろな関係を、夫が許したと言う方が真相なのかもしれない。