4度目の結婚は80歳、友人の妻を寝取るのがやめられない…ノーベル賞受賞者の異常な性癖
勃起不全が改善した反動で…
こうした異常とも言える関係が繰り広げられたのは、奇しくもラッセルが生まれて間もないころであった。ちょうど幼いラッセルと母親との間に愛着形成が行われる時期に、母親は、夫以外の別の男性を受け入れていたことになる。 そうした状況で、母親のわが子に対する関心は、多少とも上の空なものにならざるを得なかっただろう。当然、当時の貴族の習慣に従って、夫人は早々に断乳し、乳母が代わって乳房を提供したのであろう。 ラッセルの性への執着を異常に強めることになったのは、幼い頃の怪我もかかわっているとされる。ラッセルは、馬車から落ちたときに局所に傷を受けたのだが、その後遺症もあってか、若い頃のラッセルは勃起不全に悩み、そのことがコンプレックスになっていた。 もちろん、その後の性豪ぶりからすると、多分に精神的なものであったと考えられるが、青年の頃のラッセルは、自分の肉体に自信のもてない若者だったのである。 最初の妻は、ラッセルより5歳年上で、セックスに極めて消極的な女性だった。その頃のラッセルの心境としては、都合のよい相手に思えたのかもしれない。しかし、勃起不全が改善し、セックスの喜びを知るようになると、遠慮会釈のない猟色(りようしよく)へと乗り出していく。 性に対するコンプレックスが、過剰に補償されたことによると考えることもできる。 中年になって、ラッセルの哲学者、平和活動家としての声望が高まるとともに、活動を共にする取り巻きの女性たちは、彼のハーレムと化していったのである。 女性に対する飽くことなき征服欲求の根底には、安定した愛情の絆を誰とも築くことができないという欠陥があり、本来のゴールにたどり着くことなく、これまで見てきた自己目的化した行為と同様、出口のない反復強迫にとらわれるしかなかったのである。 このタイプの人は優れた能力と自信に満ち、世間的には華やかな存在であるが、身近に接すると共感性に欠け、他人の痛みにはまったく無頓着であることを思い知らされる。 私的生活においては平和主義とは正反対と言うべき人物が、世界平和活動家として高い評価を受けるというのは、よく出会う皮肉な現実であろうか。
TEXT=岡田尊司