「iPodの父」トニー・ファデルが参画する暗号資産ウォレット、Ledgerが描く未来
「デジタル時代のパスポート」に
■「デジタル時代のパスポート」に Ledgerはハードウェアウォレット市場の主要なプレイヤーであり、市場シェアは30%と推定されている。同社のデバイスは、79ドルで販売中のUSBスティック型エントリーモデル「Nano S Plus」から、399ドルで販売する、NFTを表示可能な大型タッチスクリーンを備えた高級モデル「Stax」まで、幅広い価格帯で提供され、多くのユーザーに利用されている。 Ledgerにとって最大のライバルであるTrezorは、透明性を重視するオープンソースアプローチに依存しているが、販売データを公表していない。一方、ジャック・ドーシーが率いる米ブロックが昨年12月に発売した150ドルのBitkeyウォレットはビットコインのみをサポートしており、ビットコイン支持者を対象にしたより手頃な選択肢となっている。 しかし、Ledgerにとってより大きな課題は、ユーザーにセキュリティを利便性よりも優先するよう説得することだ。伝統的な金融市場では、多くの人が大手の証券取引所や銀行に資産を預けるように、暗号資産の世界でもバイナンスやコインベースのような大手の取引所にデジタル資産を預ける人が、多数派となっている。 ソラナ財団の会長で、Ledgerの新たな取締役に就任したリリー・リウは、市場がLedgerに有利に動いていると見ている。「多くのものがパスキーやFIDO(公開鍵認証方式と生体認証を組み合わせたセキュアな認証)に向かっており、利便性とセキュリティのバランスが変化する過程にある」と彼女は指摘した。 リウはまた、すべてのユーザーが専用のセキュリティデバイスを必要とするわけではないが、高額の資産を保有する個人はすでに自己管理の段階的アプローチを採用していると述べている「かなりの資産を持っている場合、自分で完全にコントロール可能な専用デバイスを使用する方が安心できる」と彼女は説明した。 一方、元アップルのファデルは、暗号資産市場の好況と不況のサイクルを乗り越えてきたLedgeの姿勢を見て、同社の取締役会に加わることを決断したと述べている。「(CEOの)パスカルや取締役会が、さまざまな課題にどのように対処したかを見て、ここに加わりたいと思った。そして、この市場をWeb 3.0の取引だけでなく、Web 2.0の取引や認証にまで広げるべきだと考えた。AIエージェントが人々になりすまし始める中で、セキュリティは、ますます重要になっている」 ゴーティエは、Ledgerが単なるウォレット以上の存在であることを強調した。「デジタルな私有財産が安全でプライベートでなければ、本当の自由は得られない。私の究極の目標は、Ledgerのデバイスを、デジタル時代のパスポートのように不可欠な存在にすることだ」と彼は語った。
Nina Bambysheva