「iPodの父」トニー・ファデルが参画する暗号資産ウォレット、Ledgerが描く未来
元アップルのトニー・ファデルも参画
この方向性は、Ledgerがアップルやグーグルなどのハイテク大手が提供するサービスの競合となることを意味する。現状ではアップルのiCloudキーチェーンやGoogleパスワードマネージャーなどのサービスが広く利用されているが、スマートフォンには根本的なセキュリティの欠陥があるとゴーティエは指摘する。また、MetaMaskやPhantomのような暗号資産のユーザーに人気のソフトウェアウォレットについても、「セキュリティの観点から見るとひどい選択だ」と彼は断言する。 ■元アップルのトニー・ファデルも参画 Ledgerは、これまで累計6億ドル(約900億円)を調達しており、2021年のシリーズCラウンドでは、評価額15億ドル(約2250億円)で3億8000万ドル(約571億円)を調達した。また、2023年初頭にも同じ評価額で1億800万ドル(約27億円)を追加で調達した。同社は、これまで700万台以上のデバイスを販売し、世界の暗号資産の20%(2024年11月末時点で約60兆円)を保護していると主張する Ledgerはまた、2023年1月に「iPodの父」と呼ばれる、元アップル幹部のトニー・ファデルをデザイナーに起用したウォレットのLedger Staxを279ドルで発売したことでも注目を集めた。ファデルは、11月23日にLedgerの取締役会に参加したことを明らかにしている。 ハードウェアがLedgerのビジネスの中心であり続けている一方で、サービス部門も最近の成長をけん引している。Ledger Live(暗号資産やNFTの購入、交換、ステーキングを行うモバイルアプリ)やLedger Enterprise(企業がデジタル資産を管理するためのプラットフォーム)は、同社の事業拡大の約半分を占めている。 Ledgerの競合としては、プラハを拠点とするハードウォレットメーカーのTrezor(トレザー)だけでなく、バイナンスやコインベースのような中央集権型の暗号資産取引所が挙げられるが、同社の戦略は明確だ。それは、ハードウェア以外に事業を多角化していくことだ。