【2024年のEC業界予測】景況感は「厳しい」。押さえておきたい“警戒ポイント”と対策まとめ
ほかにも知っておきたい! 2024年の警戒ポイント
他にもEコマースの業界においての2024年の厳しい予測を紹介したい。 ■ (1)ネットショップの増加 コロナ禍で非対面の販売方法が注目されて、ネットショップを開業する企業が急増。たとえば、「楽天市場」の2019年12月末の出店数は4万9887店だったが、2023年3月末時点では5万7079店まで増加、店舗数が約15%も増えた。 コロナ前まではネットショップが増えても、それ以上にEコマースの市場が拡大していたので、多くのネットショップが恩恵を受けることができた。しかし、2024年はお客の奪い合いが激化し、広告の反応が鈍くなったり、商品ページのコンバージョンが落ちたりするネットショップが増えると予想する。 ■ (2)高機能化したレコメンドの影響 検索エンジンやネットショップのモールのレコメンド機能が向上。お客が「欲しい」と思った商品を、ピンポイントで検索結果の上位に表示させることができるようになった。 半面、お客が検索窓にキーワードを入力したり、検索結果をスクロールして商品を探したりする機会が減り、小規模のネットショップに“おこぼれ”が回りにくくなっている。 このような背景から、2024年は「売れているネットショップ」がより売れるようになり、「売れていないネットショップ」はさらに売れなくなるという二極化が加速していくことが予想される。 ■ (3)人件費の高騰 大手企業のEコマース事業への参入が相次いだことで、WebディレクターやWebデザイナーの転職が活発化している。今後、ネットショップの人材不足や人件費の高騰は不可避であり、特に地方都市のネットショップの人件費はいまだに低いことから、今後は大手企業への引き抜きが増えることが予想される。 コロナ禍でオンラインによる在宅業務が可能になったことで、ネットショップの優秀な人材が都心部の大手企業に集中することが考えられる。 ■ (4)「楽天市場」のSKUの影響 「楽天市場」のネットショップのコストアップは、ある程度、覚悟しておいたほうがいいかもしれない。ユーザーにとって買い物がしやすくなる「SKUプロジェクト」の導入に伴い、商品の管理や登録がより厳密になり、業務が煩雑になることが予想される。 □ 「安売り」「広告投下」だけでは生き残れない また、商品の組み合わせやアップセルが客単価アップにつながることから、自社のネットショップを俯瞰(ふかん)で見られる優秀なWebマーケッターの確保が急務と言える。 今までセール時に安売りをして、広告を投下するだけの単純なマーケティング戦略で売り上げを作ってきたネットショップは淘汰(とうた)されることが予想される。加えて、2024年6月より、翌日配達で対応すると配送認定ラベルが付与される優遇措置を開始されることから、「楽天スーパーロジスティクス(RLS)」に商品を預けることが、楽天内の検索結果で優位性が保たれるようになることが予想される。 □ 「楽天市場」、RLS活用はコストアップに注意 RLSの活用によって、送料は安価に抑えられるものの、自社倉庫からRLSへの出荷の回転数を上げる必要があるため、取り扱う商品によっては、送料や商品管理のコストアップにつながるネットショップが出てくることが予想される。 ■ (5)広告費の高騰 ネットショップの増加に伴い、少ない広告枠の取り合いが発生し、広告費が例年以上に高騰することは避けられないだろう。XやInstagram、TikTokやYouTubeなど、SNSや動画の媒体が増えたことで、ネットショップ側もまんべんなく広告を投下しなくてはいけなくなったことも、広告費の増加の要因となっている。 また、動画広告の枠が増えていることから、バナーやサムネイルを作るよりも制作コストが上がっているため、今後は広告費以上に製作費のコストアップを強いられるネットショップが増えていくと予想する。