【2024年のEC業界予測】景況感は「厳しい」。押さえておきたい“警戒ポイント”と対策まとめ
2024年、勝ち馬に乗るためのポイント
ここまでお先真っ暗な予測ばかり述べてきたが、事前に対応策をしっかり講じ、先手を打てば小さなネットショップでも勝ち目のある1年になる。むしろ、厳しい2024年に踏ん張ることができれば、この先、5年、10年は安定成長が見込めるネットショップになり、事業を拡大させていくチャンスをつかむことができる。 ■ 商品改善の成功事例「ダメ出しの殿堂」 2024年の最も効果的な対策は、徹底した商品力アップである。既存の商品の常識を疑い、新商品として生まれ変わらせる事例は、コロナ禍より増えている。そのなかでも注目されているのが、既存商品のユーザーに厳しいダメ出しをしてもらい、徹底して商品の改善をおこなうケースである。
たとえば、PB商品の売り上げを伸ばしているドン・ホーテの場合、ユーザーが自由に書き込める「ダメ出しの殿堂」を用意し、そこに寄せられた意見を取り入れて、商品力のアップに取り組んでいる。
また、ハードウエアブランドのアンカーは、Amazonのヘビーユーザーに新商品を無料で送り、レビューを書いてもらえる「Amazon Vine先取りプログラム」を活用。商品の改善点を徹底的に掘り起こし、「4」以上の評価が安定してつけられるようになったタイミングで、広告の投資を行って売り上げを伸ばしている。 このように、商品を社内スタッフだけで改善していくのではなく、お客を巻き込んで商品力に磨きをかけることが、物価高でもお客に選ばれる商品となる。 ■ 利益アップのための自社商品強化が加速 商品力の強化と同時に、利益率を高めることも重要である。先述したように、今後のネットショップは広告費と人件費が高騰することから、利益率の低い商品ではネット販売で利益を出すことが難しくなる。仕入れ商品や型番商品は、より安い販売価格の商品が求められることから、価格競争力のないネットショップは今まで以上に淘汰されていくことになる。 相場よりも安い価格で、なおかつ高い利益率を確保するためには、自社のオリジナル商品を販売する必要がある。昨今のEコマース業界のD2Cのネットショップ全盛の流れは、さらに加速していくと予想する。 ■ 商品力アップの秘訣(1) 動画映え 2024年の商品力には、「動画映え」することも、売れる商品の条件のひとつとしてあげられる。ネット業界全体に動画コンテンツが増えているため、動画で付加価値が伝えられない商品は、売ること自体が難しくなってきている。XやInstagram、YouTubeなどSNSも動画が主流になっていることから、動画と相性の良い商品を設計することが、ネットで売れる商品開発には必要不可欠になりつつある。 「この商品をどうやって動画で紹介するのか?」ではなく、「動画で紹介して売れそうな商品にするためには、何を作ればいいのか?」という逆算で商品開発ができなければ、インスタグラマーやティックトッカーに紹介してもらえる商品にはならない。 ■ 商品力アップの秘訣(2) 商品ページのクオリティ向上 商品ページのクオリティアップにも力を入れたいところである。モールの場合、セール時に広告を投下し、販売数を伸ばして検索結果の上位を確保、その後、安定して売れ続けることによってアルゴリズムから高い評価を受けて、さらに検索結果の上位をキープし続けることが、最近のネットショップの売上アップの王道の売り方になっている。 しかし、仮に広告を投下して検索結果の上位を獲得できたとしても、商品ページのクオリティが低ければ、すぐに売れなくなってしまい、検索結果が下落してしまう。つまり、モール内で売り上げを作るためには、セール時の広告投資に加えて、商品ページのクオリティの高さが、安定した売り上げの確保に必要不可欠になっている。 このように、商品ページのクオリティが低いと、投資した広告費を回収できなくなってしまうため、利益を確保すること自体が、難しくなってしまう。そのような事情から、社内でWebページを制作できるスタッフを抱えて、そのうえで、ページのブラッシュアップをタイムリーに行える社内体制を整えることが、これからのネットショップ運営には求められる。 ■ マーケティング施策はOMOに活路。コスト減に効果も 2024年のマーケティング施策としては、OMO戦略に注目が集まる。OMOとはOnline Merges with Offlineの略で、ネットとリアルの垣根をなくし、すべてのツールを使って顧客体験を最大化させる施策のことである。 □ ネット広告からのコスト圧縮にも効果 ネットショップが実店舗から集客したり、その逆のやり方で商品を売ったりすることは、数年前から行われているネット販促の手法のひとつではあった。ニッチな売り方のため、Eコマースの業界では、王道の販促とは言いにくいところもあったが、ネットの広告費の高騰と店舗同士の競争が激化したことで、コロナ禍以降、実店舗から集客したほうが、ネット広告よりも顧客コストが安価になっているケースが目立ち始めている。 たとえば、東京都渋谷区のレイヤードミヤシタパーク内でEC事業者が期間限定で出店できるリアル店舗「ザ・ストア」では、月平均の顧客獲得単価が、ネットによる顧客獲得単価を大きく下回るネットショップが続出したという。