<三南プライド・’21センバツ>後輩に託した思い/下 遠藤隼人トレーナー(30) 体調考慮し負荷調整 /静岡
◇ジムで指導、適切なメニューを提供 「しっかりとやりましょう」。さわやかなかけ声で促し、選手たちに数十キロの重りをゆっくりと上げ下げさせる。三島南の最寄り駅から2駅先の伊豆箱根鉄道駿豆線三島田町駅前にあるイブキジム。選手たちは週に1度、1回あたり1時間半程度、ウエートトレーニングで汗を流す。 中高の部活動は、成長期の生徒の心身のバランスのよい成長を考慮し、スポーツ庁が活動日や練習時間の目安についてガイドラインで示している。三島南は効率化のため、チームを3班に分割、1班ごとにグラウンド練習の日やウエートトレーニングの日などを分ける。 ジムが提供するメニューも選手たちの体調を考慮し、負荷が適切となるように調整されている。「マラソンの授業があるから足に負担がかかりすぎないようにしてほしい」「高い負荷が必要」などと、稲木恵介監督(41)に時期ごとの大まかな方向性を確認しながら、決定する。 日が落ちるころ、ジムを出て、自転車や電車で家路につく選手たちの姿は、自身が1、2番打者として「甲子園」を目指した現役時代と隔世の感がある。当時は練習時間が長く、午後11時に帰宅することが当たり前だった。「自分にとって、それが普通でした」と苦笑する。 ジムを開いた2019年、稲木監督に「母校のために協力してほしい」と声をかけられた。チームを班に分割するトレーニングの方法や野球振興の考え方に共感。トレーナーを引き受けた。「(長い練習で拘束されて)野球以外のことができなくなれば、野球人口は減りますよね」 「体を大きく、全身をくまなく鍛える」。これが一貫して掲げる方針だ。公立は私立の強豪校と比べ、体の線の細い選手が多い。食事やサプリメントの指導を含めて、けがをしない体づくりやコンディショニングを追究。常に明るく声をかけ、リラックスできる雰囲気づくりに徹する。 過度な緊張はウエートトレーニングに禁物。のびのびと体を動かす選手たちに自分の現役時代と違った頼もしさを感じている。「指導する選手たちが甲子園の舞台に立つという実感は、まだわきません。でも、むしろ、野球部OBたちのほうが喜んでいるかもしれませんね」 20日の初戦が近づく中、浮いた様子を見せず、いつも通りのメニューをこなす後輩たちの姿に目を細めた。【深野麟之介】