本格運行か撤退か 大阪市「オンデマンド交通」実験は23年度が正念場に
地域住民「赤バス以来のタイムリーな施策」
会議には、各エリアの区長らも委員として出席。これまでの会議では、「赤バス以来のタイムリーな施策、本当にありがたい、という声もよく耳にしている」、「絶対つぶさないでほしいという強烈な依頼がきている」と運行継続を望む地元の声を伝える一方、「赤字を垂れ流して社会実験するくらいなら地下鉄の運賃を下げて」など厳しい意見も紹介していました。 23年度で収支均衡の実現は難しくても、せめて将来的には事業として成り立つ見通しをつけ、本格運行につなげるには何が必要か。近畿地方の複数自治体で地域公共交通会議のメンバーを務める近畿大学理工学部の柳原崇男准教授(48)は、「こうした取り組みは、行政主導あるいは事業者主導では(成功させるのが)なかなか厳しいのが現状。地域からの発意や協力がないと、なかなか需要は掘り起こせない」と指摘します。 実際、富田林市では、地域住民から行政や事業者に働きかけて、交通空白地域にバスを導入。移動困難者のみの利用では採算をまかなえないため、地域住民が自家用車を利用する住民にもバスの利用を促しているそうです。柳原准教授は、「地域一体となって公共交通を守る取り組みを地道に進めることで、ようやく採算が成り立つ可能性が見えてくる」として、地域の協力を得ることの必要性を強調しました。 23年度、両社がどのようにして各エリアにおけるAIオンデマンド交通事業の持続可能性に見通しをつけるのか、引き続き注目していきたいと思います。 (取材・文:具志堅浩二)