【毎日書評】やりたいことなんてない状態から「キャリアの答え」を自分で切り開くヒント
私は一般社団法人プロティアン・キャリア協会の代表理事をしている、有山徹です。現代の働き方にマッチした自律型のキャリアである現代版プロティアン・キャリア理論を、これまでに約30万人、上場企業を含む200社以上に届けてきました。(「はじめに」より) 『なぜ働く? 誰と働く? いつまで働く? 限られた人生で後悔ない仕事をするための20の心得』(有山 徹 著、アスコム)の著者は、自身のバックグラウンドについてこう説明しています。つまり具体的には、キャリアコンサルタントということになるのでしょう。 キャリアコンサルタントに関しては、転職ノウハウを教えくれるとか、転職先を斡旋してくれるというようなイメージを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。しかし著者は、コンサルの仕事とは“筋のいい問いで相手の頭や心を動かすこと”だと考えているのだそうです。 働く環境が大きく変化する中で、自分の仕事や働き方にぼんやりとした不安や疑問を抱える人がとても増えました。とりあえず働いているけれども、それが本当に自分にとってベストなのか、ふと思い悩んでしまうのです。 そんな人たちも、ちょっとした問いをきっかけに自己理解が深まることがきっとあるはずです。(「はじめに」より) 本書の根底にあるのはそのような思い。そして、より多くの人にそんなきっかけをつかんでもらえるのではないかと信じて、本書を書いたのだそうです。 きょうは第1章「なぜ『やりたいこと』に悩むのか」のなかから、「『やりたいこと探し』に焦らなくてもいい」という項目に焦点を当ててみたいと思います。ここで明らかにされているのは、「やりたいことがわからない」という方のための考え方です。
やりたいことがなくても当たり前
もし、「なにかやりたいことはないんですか?」と問い詰められたりしたら、多少なりともイヤな気持ちになってしまうのではないでしょうか。「ありません」などと口にしようものなら、なにも考えずに生きているみたいで、他人より劣っている気さえしてくるかもしれません。 しかし、ほとんどの人が「明確にやりたいこと」など持っていないのではないかと著者は指摘しています。実際に、「やりたいことがないんです」と悩んでいる人に、たくさん出会ってきたのだとか。 そればかりか自身も同じで、30代後半にはやりたいことを模索し、40代の現在も、50代に向けてやりたいことを探しているのだといいます。だからこそ、焦る必要はないのだと断言できるのでしょう。 ちなみに、この悩みは少し視点を変えることで確実に解消できるそうです。具体的には、やりたい「こと」とか「なにを」から少しだけ離れてみればいいということ。 なお、そのことに関連し、勤め先の会社が経営統合され、以前より大きな組織で働くことになったS木さんの例が紹介されています。確認してみましょう。(27ページより)