【危機】中国産“シャインマスカット”から残留農薬 日本産への風評被害懸念「全体の問題として誤解される可能性」狙われる日本のブランド果実
被害額は年間100億円以上
農水省の「海外流出防止に向けた農産物の知財管理検討会」元メンバーである、小山隆史弁護士は、今回の事態が日本に与える影響についてこう話します。 小山隆史氏: 元々日本で開発されて有名になったブドウ品種ですので、東南アジアでは比較的高価格帯で売られているという意味で、日本産のブランドとして一定の区別はされているとは思うのですが、一方で、そういうものが売られているのは都市部のスーパーや百貨店なので、地方でそういうものを見たことがない方が、(パッケージの)「China」を見ると、シャインマスカットはもしかしたら中国のものなのかとか、今回の問題も中国産や一部の問題ではなく、全体の問題として誤解されるようなことも起きるのではないかという懸念はあります。 1973年に品種改良を開始。33年の歳月と努力を積み重ねて、2006年に品種登録された、日本発祥のブランドブドウ「シャインマスカット」。 しかし、近年、その努力の結晶が“苗木”として中国や韓国に流出し、日本以外で大量生産されたものが東南アジアなど第3国に輸出され、市場も奪われる事態に発展。 苗木の国外への持ち出しは現在禁止されていますが、今でも違法に持ち出される状態は続いており、農水省は、シャインマスカットの被害額は年間100億円を超えると算出しています。 ――苗木の持ち出しなどは止めることは難しいのでしょうか? 小山隆史氏: 日本では品種登録をしていますので、無断で使うことはできないのですが、品種登録をしたときの「育成者権」は登録をした国でしか効力が及ばないと。 日本で登録をしていても、中国や韓国で登録をしていないと持ち出されてしまい、生産されるとそこでは権利侵害ではなくなってしまうので。 登録が認められていれば、持ち出されても栽培自体が違法になるので、差し止めや権利交渉はできたのですが…。 ――日本は作ることは優れているが権利を守ることに無頓着なイメージがあるが 例えば会社は商標をビジネスに使うので特許の登録を外国でもして、権利交渉をしているのですが、農業の方は“いいもの”を、例えば県のセンターなどで開発して、日本の農業者に使っていただくと、善意でやっていたというのもあって、なかなか個人や県が権利をきちんと外国で取ったり、外国で侵害されているかどうかのチェックというのは、予算的にもノウハウ的にも難しかったのではないかなと。 現在は、農家さんや県などがなかなか難しい権利関係を、国もバックアップしながら、育成者管理機関を立ち上げようと進めているので、問題意識を踏まえて対応しようとはしていると。