亡き祖母のために…ダウン症の女性ランナーがニューヨークマラソンを初完走
見ている人たちにも喜びをもたらす存在
ニューヨークシティマラソンの当日。途中で足を止めて観客とダンスをする姿を見せていたケイリーさんに対し、母親であるサンディさんは完走できるか不安を感じていたそう。そんな時、二人の友人であるティナ・ミューアさん(元ランナーで、『Becoming a Sustainable Runner』の共著者)がサンディさんに伝えたアドバイスは、「心配するのはやめて、この瞬間に浸るように」という言葉。 友人であるティナさんは、ケイリーさんと並走しているときに見る光景とその素晴らしさについて、次のように表現しています。 「(ケイリーと並走していて)とても素晴らしいと思うのは、見ている人たちにも彼女が喜びをもたらすことです」 「ごく少数の人にしかできない方法で自分自身を表現しているケイリーがそばを通りかかったとき、人々の表情が明るくなるのを見ていると、満たされた気分になります」 共通の友人を介して知り合ったことで意気投合し、2023年のボストンマラソンにも一緒に挑戦した三人。ボストンマラソンでは、ケイリーさんは「ランナー321※」として出場し、マラソン中に21マイル(約33.7km)地点で中断を余儀なくされるという過酷な場面もありました。※21番染色体が3本あることで起こるとされるダウン症を象徴する数字で、「321」のゼッケン番号は、ダウン症の選手用に用意された出場枠を意味する そういった経験を経ても挑戦を続けるケイリーさんについて、ティナさんは次のように話しています。 「ケイリーは、一緒にいる人々にとてつもないエネルギーを与えてくれるんです。(中略)ケイリーは純粋な“愛”で満たされています。彼女があらゆる場面で人々に影響を与えていることがわかるでしょう」
母娘が走りつづける理由
メディアへの露出の意義についてケイリーさんと母サンディさんは、「障がいをもつ人たちに、それがどのような障壁であれ『自分たちも壁を乗り越えられる』と気づかせる助けになるはず」と考えています。 故郷であるオースティンでは、「スペシャルオリンピックス※知的・発達障がいをもつアスリートたちが参加する競技会」のパワーリフティング代表団をつくった二人。現在ケイリーさんとサンディさんは、短・中・長距離走などの代表団もつくりたいと思っているそう。 マラソンを終えたケイリーさんは「身体が痛くて疲れた」と言っていたものの、完走したお祝いにマルガリータを飲むのを楽しみにしていたそう。 「これが私たちの“新しい慣習”なんです。(中略)ケイリーの祖母が亡くなってから、ケイリーと私の二人きり。でも、私たちにはランニング・コミュニティがあり、それが私たちの“家族”になっています」 サンディさんとケイリーさんが走るのは、走ることを楽しみながら健康状態を維持し、ほかの人にも良い影響を与えたいと思っているから。二人の今後の予定に関しては、12月から2月の3カ月間、オースティン・ディスタンス・チャレンジというハーフマラソンを毎月走る予定だと明かしました。