横浜F・マリノスをACL決勝に導いた“楽しむ”姿勢。変化を生み出したキューウェル監督の「選手目線」
ホームの大声援受ける選手の表情には、必死さの中にも笑顔があるはず
マリノスは5月10日にアル・アインとのACL決勝第1戦に向けた前日練習を報道陣に公開した。大一番に向けてヒリヒリとした緊張感が漂っているのかと勝手に想像していたが、選手たちの表情は笑顔に溢れ、冗談も飛び交う。引き締まった雰囲気もありながら、余裕すら感じられた。 宮市は充実した表情で取材に応じ、前日練習について次のように語った。 「やっぱりプレッシャーもあると思うんですけど、それ以上にこの大一番でプレーできるという選手としてのうれしさや、チームとしてこの舞台にいられる喜びをみんなが噛み締めている。アジアのNo.1を決める大会の決勝にいるわけなので、いい意味でみんなリラックスして、楽しんでいけるような雰囲気だったなと思います」 水沼もACL決勝への高揚感を隠そうとしない。 「みんなモチベーション高く、雰囲気よく練習できましたし、とにかくみんなが楽しみなんだなというのが伝わってくるくらいの練習ができたので、明日は平常心で、みんなが望むことをできればいいなと思います。僕自身もワクワクを持ちながら明日を迎えて、自分の役割をしっかりやり遂げたいです。 (キューウェル監督は)楽しむというより現実的な話はしていましたけど、そこに関しては明日の試合前もそういう話をされると思いますし、とにかくこの舞台はみんなが立てるわけではないので、その幸せや喜びを感じながら、ワクワクや楽しみという気持ちでプレーできればいいかなと思います」 横浜国際総合競技場で5月11日に行われるACL決勝第1戦のチケット発券枚数は、10日午前の段階で4万9000枚を超え、5万人以上の観客が詰めかけることはほぼ確実になった。 キューウェル監督は蔚山現代を退けてACL決勝進出が決まった直後の記者会見でこう言った。 「決勝で大事なのは、とにかく楽しむことです。人生の中で決勝に進める人はそう多くはいません。とにかくこの決勝という舞台を楽しむことが大事ですし、楽しんでいきたいと思います」 選手と同じ目線に立ち、体の奥底に秘められた純粋さを引き出すキューウェル監督のマネジメントが、マリノスの選手たちを輝かせている。指揮官は決勝第1戦に向けた記者会見でも「このチャレンジを心から楽しみにしている。こんなチャンスは2度と訪れないかもしれない。メンタル的にも大きなチャレンジになるかもしれないが、チームと選手たちを信じているし、とにかく楽しんでやっていきたい」と引き締まった表情で語った。 一生に一度かもしれないアジア最強を決める場でもサッカーの本質である「楽しむ」ことを忘れてはならない。ホームの大声援を受けながらプレーする選手たちの表情には、必死さの中にも笑顔があるはずだ。ACL決勝を戦える幸せや喜びを噛み締め、持てる力のすべてを解放することができれば、きっと勝利の女神も微笑んでくれるはず。勝ってアウェイでの第2戦に迎えることを信じて、キックオフの笛が鳴る瞬間を待ちたい。 <了>
文=舩木渉