スパイスカレーの次は「クラッシュカレー」が来る!カレー研究家・水野仁輔さんがハマったカレーとは?
クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。今回はカレー研究家の水野仁輔さんがゲストです。 ◇ ◇ ◇
“スパイスカレー”という言葉の生みの親!?
小竹:水野さんは2010年に『かんたん、本格!スパイスカレー』という本を出されていますが、“スパイスカレー”という言葉の生みの親と言われているそうですね? 水野さん(以下、敬称略):何年か前に雑誌の『dancyu』でスパイスカレーの特集をする際に、“スパイスカレー”という言葉がいつ生まれたのかを調べたらしいんです。 小竹:そんなことがあったのですね。 水野:調べた結果、僕の本『かんたん、本格!スパイスカレー』が世の中で初だと、記事で書かれたんです。そしたら、「水野がスパイスカレーの生みの親だ」みたいになって、その後スパイスカレーが盛り上がっていったときに取材の依頼が殺到するようになったんです。 小竹:『dancyu』すごい(笑)。 水野:「スパイスカレーの生みの親として、今の盛り上がりはどう見ていますか?」とか「スパイスカレーはこれからどうなっていきますか?」とかって取材依頼が殺到して…。 小竹:うんうん(笑)。 水野:僕は全てお断りして。「僕は知りません」って(笑)。料理業界でもジャンルごとに“元祖論争”みたいなのがありますよね。「元祖○○のお店」とかって。ああいうのは、きっと全てが正しいと僕は思うんです。 小竹:全てが正しい? 水野:いろいろなところでいろいろな人が考えて思いついて、同時多発的に新しい料理は生まれていると思うんです。そのときにたまたま紙に残る形でスパイスカレーという本を出したのが僕が最初だっただけという気がして。 小竹:たまたまね。 水野:ただその後、スパイスカレーという言葉がどんどん広まっていったし、スパイスカレーのレシピ本も何十冊も出ているし、僕も毎年出し続けていて、「水野さんの本を読んでスパイスカレーのお店を始めました」なんて人にもよく出会うんです。 小竹:すごいですね。 水野:だから、そういう意味では僕も人気の一端は担っているとは思いますが、僕が生み出したということではないですね。 小竹:それまでは何と言っていたのですか?インドカレーですか? 水野:なぜスパイスカレーと僕が言ったかというと、それまでのカレーの世界では、市販のルーを使って作るカレーのことを「ルーカレー」と言っていたんです。で、この本はルーではなくスパイスだけを使って作るカレーの本だから、ルーカレーに対抗してスパイスカレーにした。当時、僕の中ではルーカレーがライバルだったんですよ。 小竹:そういうことなのですね。 水野:やっぱり市販のルーで作るカレーがほとんどなので、スパイスで作るカレーをもっと盛り上げたいというのがあって、ルーカレーをライバル視して、やっつけてやるという気持ちでスパイスカレーと名付けました。 小竹:なるほど。 水野:インドカレーはインドの食文化におけるカレー的なもののことで、スパイスカレーはインドカレーとかタイカレーとか、その国に寄ったものではなく、スパイスだけを使って作る、そしてスパイスの香りがすごく効いているカレーのことを総称して言うんです。 小竹:そうなのですね。 水野:スパイスカレーという言葉が生まれたのは14年くらい前ですが、この言葉が生まれる前からやっているお店も、今はスパイスカレー専門店と呼ばれているところが結構ある。「デリー」もスパイスカレーのお店だと認識している人もいるんです。 小竹:うんうん。 水野:だから、今はスパイスカレーという言葉はまだ完全には定まっていなくて、まだ盛り上がっている最中なので、もっと何年も経ったときには、「スパイスカレーとはこうです」という大きな定義ができるのではないかなとは思います。