ロシアで「トランプ停戦案」に懐疑論…米国、ウクライナに7億ドル追加支援
トランプ次期米大統領の就任を控えて議論されるウクライナ戦争停戦交渉に対しロシアから懐疑的な声が相次いで出ている。ウクライナのゼレンスキー大統領が当初ロシアに奪われた領土全体を奪還しなければならないとしていた立場を旋回し北大西洋条約機構(NATO)加盟を保証されるならば停戦交渉に応じると明らかにしてからだ。一部ではトランプ氏がウクライナに長距離武器使用制限を解除した米バイデン政権の決定を翻意すれば停戦議論が始められるだろうとの主張が出てきた。 ◇「西側がウクライナに再武装の機会与えるため停戦議論」 タス通信によるとロシアのラブロフ外相は2日、ハンガリーのシーヤールトー外相と会い、「西側はウクライナに休息を与え先端長距離武器で再び再武装する機会を与えるための手段として停戦に関し話し始めた。これは平和に進む道ではない」と主張した。 続けて「西側の指導者がゼレンスキーのあらゆる気まぐれに屈服するようだ。彼らの立場はウクライナがいないならウクライナに対して一言も言わないということだ。彼らが2年以上『ゼレンスキーの公式』に基づいてロシアを排除してロシアについて議論してきたということはだれも気にしないようだ」と批判した。ただ彼は「すべての当事者の正当な利益を考慮するならばわれわれは率直な対話に出ることができる」と付け加えた。 ◇「トランプ氏はゼレンスキー追放後にプーチン氏と会うべき」 この日フィナンシャル・タイムズにはロシアのプーチン大統領がトランプ氏の平和提案を拒否する可能性が高いという主張も掲載された。ロシアの財閥でありプーチン氏の側近として知られるコンスタンチン・マロフェーエフ氏は同紙とのインタビューで「トランプ氏がウクライナ・ロシア特使に指名したケロッグ氏が平和計画を提案してもわれわれは彼に『くたばれ』と言うだろう。建設的な交渉に向けてはトランプ氏がウクライナに長距離武器使用を許可した米国の決定を翻意し、ゼレンスキーを追放した後にプーチン氏と会い最高水準で世界秩序問題を議論してこそ対立を終わらせられる」と主張した。 外信によると、ケロッグ氏がまとめた終戦案にはウクライナが平和会談に参加しなければ米国がウクライナへの武器供給を断ち、ロシアが交渉を拒否すれば米国のウクライナ支援が増加するものと警告する内容が盛り込まれた。両国の最前線を凍結し非武装地帯を設定してNATOや他の米同盟国の兵力が担当する内容もある。ロシア対外情報庁(SVR)のナルイシキン長官は先月26日、「ロシアはウクライナ紛争を凍結するすべての案を強く拒否する」と話した。 マロフェーエフ氏は続けて「米国がウクライナ支援を撤回するのに同意しなければロシアは戦術核兵器を発射できる」と威嚇した。トランプ氏がロシアと中国の同盟強化など世界的争点を議論する意志がなければならず、ウクライナがロシアの核心利益の一部であることを米国が認めなければならないともした。フィナンシャル・タイムズは「マロフェーエフ氏のアイデアはプーチン氏が提示した停戦条件(ロシアが占領した4地域の領土譲渡、NATO加盟放棄)からもう一歩踏み込んだもの」と評した。 この日ロシアはトランプ氏が先月30日にロシアなどBRICS諸国に向けドル覇権に挑戦すれば100%関税を課すと威嚇したことに対しても批判した。ロシア大統領府のペスコフ報道官は「多くの国でドルが基軸通貨として魅力を失っている。米国が経済力と呼ばれる武力を使用して各国にドルを使うよう強要するならば(国際貿易で)自国通貨に転換する傾向がさらに強まる逆効果を生むだろう」と主張した。 ◇バイデン氏、ウクライナ追加支援 一方、米バイデン政権はウクライナに追加で対人地雷、対ドローン弾薬、高速機動砲兵ロケットシステム(HIMARS)用弾薬など7億2500万ドル相当の軍事支援を提供するとこの日発表した。ブリンケン国務長官はこの支援について、米大統領が議会承認なく武器を提供できる権限である大統領在庫引き出し権限(PDA)に基づいたものと明らかにした。ブリンケン長官は3~4日にベルギーのブリュッセルでトランプ氏就任前に最後に開かれるNATO外相会議にも参加しウクライナ問題を議論する。 先月プーチン大統領と電話会談したドイツのショルツ首相もこの日ウクライナを訪問してゼレンスキー大統領に今月末以前に引き渡す6億5000万ユーロの追加軍事支援を約束した。 ◇「ロシア、北朝鮮が提供のミサイル60基使用と推定」 ウクライナ情報庁はこの日、ロシアがこれまで北朝鮮から提供された弾道ミサイルのうち60基をウクライナ攻撃に使ったと推定されると明らかにした。ウクライナ国防情報局(DIU)報道官は現地ラジオ放送のインタビューでロシアのKN23(北朝鮮名・火星11カ)弾道ミサイル使用に対する質問にこのように話した。KN23はロシアの「イスカンデルM」と類似の戦術誘導弾だ。