2つの脳で別々の手を動かして運転…1つの身体を分け合う「結合双生児」の姉妹、「体の仕組み」の解説動画が話題
<2012年のリアリティ番組で有名になった結合双生児の姉妹。34歳になった現在の生活の様子と、身体の構造を解説する動画を分子生物学者が制作>
アメリカのケーブルテレビ局TLCが、結合双生児の姉妹の日常を追うリアリティ番組を放映して話題を呼んだのは2012年のこと。当時は大学生だったアビーとブリタニーのヘンゼル姉妹も今では34歳。2人はこのほどTikTokで新しい動画を公開し、「一般的ではない体の構造にも関わらず」不可能を可能にし、幸せに暮らしている様子を伝えた。 【動画】2つの脳で別々の手を動かして運転...1つの身体を分け合う「結合双生児」の姉妹、「体の仕組み」の解説動画 この動画は分子生物学者で動画制作者としても活動するハシェム・アルガイリが手がけたもので、「私たちも新しい年を迎えます」と題されている。 アビーとブリタニーの体の組織や器官は、2人で共有しているものもあれば個別に持っているものもある。動画のナレーションによれば、頭部と脳と脊髄は別個にあり、背骨も2本あるが尾骨のところで融合しているという。 心臓も2つあるが循環器系は1つで、肺は4つある(うち2つは部分的に融合)。胃は2つ、胆のうも2つあるが肝臓と小腸、大腸、骨盤、ぼうこうはそれぞれ1つで生殖器も1組、腎臓は3つで腕は2本、足も2本だ。 ■左右の手をそれぞれが制御するが、運転免許は別々に取得 ナレーションによれば、それぞれの心臓は「同じ1つの(循環器)系に血液を送り込んでいる。つまり、片方の動きがもう片方に直接、影響を及ぼしているということだ」という。 一方で脳と脊髄は独自に機能しており、体を動かして何かをしようと思えば、左右それぞれの動きを協調させなければならない。 「アビーとブリタニーはそれぞれ、自分の側にある腕を制御している。アビーは右腕を、ブリタニーは左腕を」とナレーションは説明する。「足も同様で、アビーが右足を制御し、ブリタニーは左足を制御している」 左右で制御が分かれているにも関わらず「動きは高度に連携が取れている」とナレーションは続く。「ものを持つ、キーボードを打つ、車のハンドル操作をするといった左右の腕を必要とする動きは、切れ目のない協働とコミュニケーションの賜物だ」 ナレーションによれば、2人が「こうした作業をスムーズに行うことができる」のは「2つの脳と神経系が見事に同期しているおかげだ」という。 12年のリアリティ番組「アビー&ブリタニー」では、2人が日常的なさまざまな作業をどうこなしているかが映し出された。例えば車を運転する時には、アビーがアクセルとブレーキを操作し、ハンドルは2人で動かしている。ちなみに運転免許も、それぞれが試験を受けて別々に持っている。 ■アビーは21年に看護師の男性と結婚 今回の動画によれば、それぞれの脳が自身の胃をコントロールしているため、空腹を感じるのも別々だ。胃の調子が悪くなっても、場所によっては自分の胃でも痛みを感じられない場合がある。というのも、アビーは体の右半分、ブリタニーは左半分の感覚しかないからだ。 学術誌「放射線医学症例報告」で先ごろ発表された論文によれば、結合双生児が生まれる確率は全出生数の5万~20万分の1。そのうち60%近くは死産で、35%は生後まもなく死んでしまうという。 ピープル誌が報じたところによれば、アビーは21年11月に看護師のジョシュ・ボウリングと結婚したという。ボウリングにはイザベラという8歳の娘がいる。また、E!ニュースによれば、アビーとブリタニーは現在、故郷ミネソタ州で小学校の先生をしているという。
アーロン・ラスムセン