なぜラグビー日本代表の主将が”闘将”リーチ・マイケルからピーター・ラブスカフニに交替したのか…「今までで一番の主将に」
2018年冬、日本代表の”兄弟チーム”であるサンウルブズのシーズン前に実施された自衛隊キャンプ。早朝にバズーカ音でたたき起こされる過酷な状況下、選手の本当のタフさが測られた。その一員だったラブスカフニは、ここで目立った。 各自がリュックに重さ約20キロの装備品を入れ、別府市内全長13kmを歩く「徒歩行進」の最中。当時、3~4名1組のグループでリーダーを託されていた日野剛志は、同組にいたラブスカフニの凄みに触れる。 「まずはあの信号まで走っていこう、とか、近場の目標を言っていくんです」 当の本人は、リーダーとしての極意を「その瞬間、瞬間に何をすべきかを考えること」と話す。 あの日の訓練中という「瞬間」は、へばっていた仲間の足を動かすのに「近場の目標」を示すべきと思ったのだろう。以後の代表関連活動を通し、ラブスカフニは時に言葉で、時に堅実なタックルで周りを鼓舞してゆく。 組織にとっての最善手を打つのは、活動期間外でも同じだ。 2019年8月29日の午前中に所属するクボタの拠点でインタビューに応じた。その日の午後には、W杯日本大会の登録メンバーが発表される予定だった。取材内容には解禁時間が設けられており、正式発表されるまで、その中身が公表されることはなかった。ここまで条件が整えば、大会出場を前提に話が進んでもよさそうだった。 それでもこの人は、律儀だった。 「とりあえず、正式なアナウンスを待てと言われています」 情報管理に慎重なジョセフ体制下、ラブスカフニが尊ばれるわけだ。 実は、今回の練習公開日も別メニュー調整だったが、状態を聞かれるやこの調子だ。 「自分の口からお答えするのは難しい。ただ、軽い怪我です。日々、現状を評価しながら先へ進みたいです」 日本代表では、複数名によるリーダー陣が全体を引っ張る。リーダー陣の顔触れにはリーチ、ラブスカフニのほか、姫野、この秋副将となった中村亮土らレギュラー候補が並ぶ。首脳陣の唱えるゲームプランを共有し、グラウンド内外で取るべき態度について討議する。主将が代わっても、組織の枠組みはこれまでと変わらない。新主将就任に伴う影響は少なそうだ。リーダーで31歳の稲垣啓太は、ラブスカフニ就任が発表される前にこんな話をしていた。 「選手全員が(周りを)引っ張っていけるなか、リーダーシップグループが存在している。僕もその一員ですが、皆が(必要なことを)喋ってくれるので最終的に少しまとめるくらいで済んでいます。リーチさんから主将から代わったとしても、リーチさんはプレーにフォーカスするだけ。それによって能力を最大限に活かせる。誰かが抜けた(役目を変えた)から誰かが違うことをやる、ということはないです」