町田・相馬勇紀が感じた欧州と日本の違い。そして本気で狙う“奇跡”の逆転優勝への決意【特別インタビュー】
成長につながる黒田監督の言葉
一方で加入をして町田のインテンシティの高さにも驚かされたという。 「この強度を出せるチームってなかなかないと思います。練習でもそこへの意識は相当に高い。すごく良い雰囲気だなと感じました。このインテンシティにチーム全体としてのクオリティもさらに上がれば、もっと高いレベルにいけると思います」 さらに黒田剛監督の存在も大きいと話す。 「監督の下ではとても刺激的な毎日を送らせてもらっています。また違った成長もできているとも感じます。『全然走れてないな』ともよく言われるんです。そうやって直球で言ってくれる人ってなかなかおらず、それこそポルトガルでは言葉の壁もありましたが、文化的にもラテンの国なので、みんな明るくて、指摘をされることはなかったです。 でも黒田監督は遠慮せずに伝えてくれる。それが凄い良い刺激になっています。まだまだ足りないのですが、やっぱりやっていくうちにコンディションが上がり、できることもより増えていくと思います」 そのなかで意識するのは、まずはクラブの結果。それが最優先だ。ただ、日本代表ではここ数試合は招集されていないが、2026年のワールドカップへの想いもある。 「もちろんあります。試合はすべてチェックし、自分も一緒にやりたいなという悔しさもありますが、今代表に入っている選手は海外のトップでプレーしていて、素晴らしい選手ばかり。そこに割って入っていくのは簡単なことではありません。でもシンプルなのは、(東京)五輪のメンバーに選んでもらった時からずっと感じていますが、結果を残し続ければ、自然と選んでもらえるということ。代表とはそういう場所だと思います。 あとは今回のこともありましたが、怪我をしないことも大事ですね。自分にフォーカスしながらコンディションを保ち、チームが良い順位にいて自分も活躍していれば、自ずと道は開けるはずです。だから僕はチームで頑張るのみ。 元々は29歳で出られる(2026年の)ワールドカップを目指そうと考えていたのですが、25歳のタイミング(2022年カタール・ワールドカップ)にも出場できました。その分、良い経験を積んだ状態で挑めます。 そしてワールドカップは大会直前のコンディショも大切だとも感じました。身体の状態が良いとメンタル的にも安定し、そういった選手こそ活躍できるはずです。だからこそ焦らず、僕は結果を出し続ける。虎視眈々という感じですね。一歩ずつで積み重ねていく。僕はエリート街道を進んできたわけではないので、下から掴んでいく。そうやって進んでいきたいです」 下馬評を覆し、這い上がってきたのは、今季の町田も同様だ。そういう意味でも相馬とクラブの歩みは重なる部分もある。 残り2節を残したタイミングで、チームは2日間のオフを取ったが、相馬の頭にはふとある感情が芽生えたという。 「あまり言葉として出さないほうが良いと思うんですが、僕、本気で狙っているんですよ。リーグ優勝を。相手次第のところもありますが、この間のオフでも、可能性としては全然あるなと、考えていました。だから個人的には今は自信しかないですね。そしてその先のアジアも目指したいです」 その言葉通り、最終節のひとつ前、37節では神戸がドローに終わり、京都に勝った町田は、首位の神戸と勝点3差、2位の広島とは勝点2差で最終節を迎えることになった。 最終節はアウェーの鹿島戦。相馬にとっては2019年に名古屋から一時レンタル移籍していた古巣が相手だ。これも何かの縁か。相馬は町田の大逆転優勝を本気で信じている。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)