小島慶子「仕事と育児と家事だけの人生になってる」と思ってしまったら
40年前、私たちの親の時代には【子どもがいる世帯は7割】でした。ところが今は【子どもがいない世帯が6割】。社会は大きく変わっているはず? ……と思いきや、給料は上がらないのに物価は上がり、男女の賃金格差と雇用格差はあいかわらず。暗くならざるをえない状況だけど、どうしたら少しでも豊かな人生を送れるのか、家族や友人たちとどう楽しい時間を持てるのか、小島慶子さんと考えていく連載です。 フランスに移住した元完璧主義者が「やめて人生が豊かになった」と語る生活習慣とは?
人生は「子どもたちが元気で自分は歯磨きさえできていればOK」です!【小島慶子 明日の空模様】
子育てをしていると毎日が想定外の連続で、計画通りにはいきませんよね。先々の悩みがいっぱい。受験はどうしようか、塾はいつから通えばいいか、いったい学費は全部でいくらかかるんだ! などなど。わが子の人生を完璧にするために、ついつい気合が入ります。 そして気づけば眉間に皺がより、呼吸が浅くなって脳が酸欠に。これはよろしくない事態です。そんなときは「ほんとにあるのは現在だけ」と呟いてみましょう。当たり前ですが、過去も未来も、頭の中にしかありません。過去はもう過ぎてしまって存在しないし(あるのは不完全で加工済みの記憶だけ)、未来はまだ来ていないので存在しません(将来は妄想の産物です)。 人生は物語ではなく、辻褄も合わないもの。息を吸っては吐く体があるこの瞬間だけが、自分が触れることのできる全てです。そもそも息を吸って吐けるだけでもありがたい。私は呼吸器が弱いので、風邪を引くと鼻詰まりと咳と喉の腫れで文字通り息も絶え絶えになります。そのときのつらい記憶は強烈に体に刻まれています。だからスーッと吸ってフーッと吐けるって、すごい快楽だなっていつも思います。 でも何か心配事で頭がいっぱいになると、そういうことを思い出す余裕もなくなっちゃうんですよね。だから、どんどんネガティブになって、この先もう何もいいことなんてないという気持ちにまでなる。そんなときは体を意識的に動かして、生きてることを思い出すようにしています。 これ、私がコロナ禍で家族と会えず仕事もストップして一番つらかったときに、コーチングなどに詳しい知人が教えてくれたやり方です。知人は、ビデオ通話の画面越しに、メソメソしている私に「はい、肩を回して」「大きくゆっくり息を吸って、ゆっくり吐いて」「空気が体に入っていく感覚、出ていく感覚に集中して」などとガイドしてくれました。 最初は、これやって意味あるのかなあ、たかが深呼吸じゃんと半信半疑だったけど、もうメソメソマックスだったので藁にもすがる思いで、とりあえず言われるがままにやってみました。そうしたら、不思議とちょっと気持ちが落ち着いたんです。メソメソがメソぐらいになります。 そうしたら次に、「ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう」と考えるのではなく「今、大丈夫なことはあるかな」と考えてみる。これも何度も繰り返すうちにちょっと習慣化します。すると「今日もオーストラリアの家族はいつもと変わらず、私も気分は落ち込んでるけど痛いところはない。そうか、よかったな」などと現実に目が向くようになりました。 もちろん、家族といつ会えるかわからないとか、仕事がいつ再開するかわからないとか、心配事はたくさんあるのだけど、何か必ず、いつも通りのことやできることがあるものです。まずは、目の前の簡単なことを片付ける。「お風呂に入った、私えらい」「花に水をやった、私すごい」と一つひとつ確認すると、少し気分が良くなりました。