大学の研究用原子炉、国内では京大・近大のみ…高濃縮ウラン燃料から低濃縮への切り替え進む
新しい知見
しかし、HALEUではどんな条件でどのように核分裂反応が進むのかといった特性を知るには、コンピューターによる計算が中心で、実験によるデータが不足している。KUCAでは世界でもほとんど例がない基礎実験が可能になる。 大阪大の北田孝典教授(原子炉物理)は「シミュレーションと異なる実験結果が出てきて、新しい知見が得られるはずだ。世界中の研究者は手ぐすねを引いてデータを待っている」と説明する。
学生は減少傾向
日本の原子力研究は11年の東京電力福島第一原発事故の影響で下火になり、原子力関係学科の入学者数は減少傾向にある。文部科学省によると、10年には317人いた入学者は23年には179人にとどまる。 KUCAの低濃縮化を主導する京大の宇根崎博信教授は「国内の次世代原子炉の研究開発は後れを取っているが、世界最先端の研究に国際的に貢献していくことで、学生らにも関心を持ってもらえれば」と話す。
※高濃縮ウラン燃料
天然のウラン鉱石には、核分裂が起きやすい「ウラン235」が0・7%程度しか含まれないが、原子炉の燃料として使う際には、濃縮してこの割合を高くする。割合を20%以上に高めたものを高濃縮ウラン、20%未満のものを低濃縮ウランと呼ぶ。商業用原子炉では3~5%、京大などの研究炉では90%を超える燃料が使われてきた。