世界最古の企業「勝ち残る資格と使命」…宮大工1400年の技守る
古民家再生や文化財修復に参入
金剛組の社会的使命は、1400年培ってきた宮大工の技術を守ることだ。それが他社との差別化につながり、市場で勝ち残る武器になる。 社長に就任した20年、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に「伝統建築工匠の技」が登録された。世界が宮大工の技術を残したいと願っていることを再認識し、宮大工の育成塾の設立を思いついた。 毎年数人ずつの塾生を迎え入れ、計7組の宮大工集団で研修している。実質3年間で計11人の卒塾生が各組の宮大工として働いている。
顧客のデータベース化も進めている。過去の工事履歴を記録し、一つのシステムで管理する。「記憶から記録へ」と言っているが、「壁の塗り替え時期になりましたが、いかがでしょうか」といった提案が可能になる。 高松グループには、マンション開発など土地活用に強い会社、のり面工事を得意とする会社、文化財発掘調査の専門会社など各分野のスペシャリスト企業がそろっている。特に土地活用は社寺の安定的な運営に貢献できる。広く社寺の抱えるお悩み・課題に解決策を提示する体制が構築されている。 クラウドファンディング運営サイト大手と提携し、2軒の古寺の改修費用を集めたのも提案営業の一つで、「宗教法人のソリューション会社」が目指す姿だ。
全国の大工の人数は約30万人と、この20年で半減した。今後も木造建築の担い手は減っていくだろう。古民家の再生や文化財の修復など、木に関わる技術を磨き続けてきた宮大工の強みをいかせる分野への参入も進めている。 売り上げや利益を上げるのはもちろんのこと、我々の仕事は日本文化を守ることにつながっているという矜恃(きょうじ)を貫いてこその金剛組なのだ。
<金剛組>
現存する企業では世界最古とされる578年の創業。金剛家当主は代々、四天王寺(大阪市天王寺区)から宮大工の称号「正大工職」を授かる。2006年に高松建設の完全子会社となった。本店は四天王寺からすぐ。堺市と埼玉県に建材などの加工センターを持つ。従業員数(単独)は106人。資本金3億円。