外国人材育成は日本人と変わらないというリアル
これまで技能実習制度としての活用は最大5年間に限られ、育てた人材が活躍できるようになっても帰国しなければならないという制約がありました。しかし、2019年4月に新設された特定技能制度では、技能実習生として3年間を修了すれば、同じ職種であれば特定技能生へとビザの資格切り替えが可能で、5年間の就労が認められます。 基準を満たせばさらに5年の延長も可能です。日本政府の方針も、昨今の人手不足の中で優秀な外国人には長く日本に滞在してもらう方針に変わってきています。
優秀な外国人材は、同じ仕事をやり続けるよりも、キャリアアップの機会がある企業を求めるのが一般的です。 技能実習生からキャリアアップした先輩がいると、技能実習生らは単に基礎的な仕事をするだけでなく、将来的に管理者となる道があることを知り、仕事に対するモチベーションが高まり、さらなる成長を目指し、長く働くことを希望することにつながります。 また、キャリアアップの可能性があることは、新たに外国人材を採用する際にも魅力となり、より優秀な人材がその企業に応募してくるようになります。そういった機会がある環境は、企業と外国人、双方にメリットがある仕組みとなりえます。
ただ、こういった現実もあります。現場仕事を技能実習生に任せ、その管理を日本語も堪能な同じ国籍の高度人材に委ねるという考えを持つ企業も少なくありません。しかし、世界に比べれば身分格差が小さいと言われる日本社会と比べて、海外では日本人には理解しにくい身分差別が多く存在します。 例えばミャンマーでは、大卒と高卒以下の間、さらに同じ大卒でも工科大学卒と総合大学卒との間に顕著な身分差があります。高度人材のビザを持つミャンマー人と技能実習生のビザを持つミャンマー人の間には、一緒に食事をしないといった社会的距離を示すケースもしばしば見られるほどです。
高度人材が技能実習生を見下すような上から目線の態度をとることもあります。このような身分格差は、本来の目的である「管理」に必ずしも適していないことが少なくありません。 また、転職が自由な高度人材は優秀なほど引き手が多く、多くがお金を稼ぎに来日していることもあり、企業への思い入れが薄い場合、待遇を優先する傾向があり、とくに都会や大企業への志向が強まることが見られています。 ■叩き上げ人材を育てること こうした点も考えると、技能実習生から叩き上げで育った人材は、転職が自由なビザを取得した後でも、自らの意思で企業を選ぶなど帰属意識が高いため、組織の中核を担う人材となりえます。
企業にとって、技能実習生から管理者までの道のりは遠く感じるかもしれません。しかし、これこそ一番の近道ではないかとも感じます。 ここまで外国人採用について書いてきましたが、日本人に選ばれ、定着する会社、そして日本人の管理者を育成には一定の時間とコストがかかるのは、実は外国人も日本人も同じことなのではないでしょうか。
西垣 充 :ジェイサット(J-SAT)代表