「紀州のドン・ファン殺人事件」裁判の判決が目前、「覚醒剤は頼まれたから買いにいっただけ」元妻の主張は通るのか
■ いよいよ判決 「求刑は無期懲役」 その瞬間に廷内にいた記者たちは裁判所の外で待機していたテレビクルーの所に一斉に走り出した。11月18日、和歌山地裁で開かれていた「紀州のドン・ファン殺害事件」の初公判で論告求刑が行われた。検察側の求刑は「無期懲役」、そして弁護側は改めて「無罪」を主張した。 【写真】野崎幸助氏と一緒に食事する若い“知人”女性(中央)。記事に登場する愛人「菜々ちゃん」ではない 注目の判決が下される日が、12月12日に迫っている。 2018年5月24日夜、和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助氏が自宅2階の寝室で怪死しているところを、55歳年下の妻の早貴被告によって発見された。当時この家にいたのは早貴被告の他には家政婦の大下さん(仮名)の2人だけ。自宅を出入りする者がいなかったことは防犯カメラの映像によって明らかにされている。しかも15時過ぎから20時まで大下さんは外出しており、その間、自宅には早貴被告と野崎社長の2人しかいなかったことになる。 司法解剖された死因は2日後に判明。覚醒剤の多量摂取であり、口から何らかの方法で飲み込んだとされている。 その直後から、元妻の須藤早貴被告を犯人視する報道が一斉になされたが、和歌山県警が早貴被告を殺人などの疑いで逮捕したのは、野崎氏が亡くなってから3年後の21年4月のことだった。逮捕までに時間がかかったのは、それだけ早貴被告の犯行を裏付ける証拠集めに時間がかかったことを物語っている。
■ 公判で明らかにされた3つの重大ポイント 9月から始まった裁判では、2カ月の間に28人もの証人が登場した。法廷で証人の口から明かされた“事実”には、判決を左右する3つのポイントがあったと傍聴していた司法記者は指摘する。 「ひとつは10月初めに呼ばれた覚醒剤売人の証言です。誰がどのようにして覚醒剤を手にしたのかが争点でしたが、売人を警察が確保していたことが大きかった。18年4月7日に大阪の売人と連絡を取り、車で田辺までやってきた売人と深夜に接触し、覚醒剤を購入しに行ったのが早貴被告であることが明らかになった。しかもその晩は野崎氏は出張で不在にしていた日でした。 11月7日に出廷した28人目の証人もこの売人の仲間でした。こちらの証人は覚醒剤ではなく『氷砂糖』を売ったと主張していますが、田辺市内の自宅近くの取引現場が同じであったことは、2人の証言に真実性があるとの印象を裁判官や裁判員与えるのに大きな効果があったと思います。 検察側が早貴被告のスマホに入っていたヘルスアプリを見つけたことも大きなポイントでした。検察側はアプリの専門家を証人申請してアプリの精度が高いことを説明させ、そこに残っているデータが信頼できるものであることを証言させました。これによって検察は、早貴被告が野崎さんが亡くなった日の午後4時から8時の間に8回も2階に上がっていたと主張しましたが、これについて早貴被告は明確な釈明をすることができませんでした。