新田恵利55歳「次は私たちの番」――親の介護をしながら感じた自身の老いと介護制度の問題
周りに知ってもらう「言いふらし介護」のススメ
――介護の度合いによっては、どんどん介護する側が追い詰められてしまい、孤立してしまうケースも少なくないようですね。 新田恵利: その対策として私が講演でお話しているのが「言いふらし介護」です。「うち介護になっちゃって、本当に大変なの~!」と言いふらしてくださいとみなさんにお伝えしています。とにかくつらかったら周りに助けを求めてほしいんです。それは行政でもいいし、SNSで愚痴を言うでもいいし、お友達でもいい。何も言わなければ周りも介護しているとはわかりませんからね。 そうしておけば例えば地震があったときでも、周囲の人が「あそこには寝たきりのおじいちゃん、おばあちゃんがいたな。でも息子さん娘さんたち、この時間はいないんじゃないか」と気づいて見に行ってくれたりするかもしれません。そのことを救助隊に伝えてくれるだけで、介助が必要な人の生存率も上がると思うんです。だからこそご近所にもわかるように「私、介護しています」と声を上げて言いふらしてくださいと伝えています。 ――日本の介護にまつわる状況について「もっとこうなってくれればいいな」と期待することはありますか? 新田恵利: 介護されている母が一番飢えていたのは会話だったんですよね。でも、お話するだけというのは、公共の介護サービスとしてはなくて。やはり私も含めて働きながら介護をする方が多いので、なかなか話し相手になりきれないところもあって、被介護者の話をただ聞いてくれるサービスもあったらいいと思いました。 また、介護保険では介護度別に単位をもらえるシステムになっているのですが、うちは兄と2人だったのであまりヘルパーさんの力を借りることなく介護をすることができていたので、おそらく単位が余っていたと思うんですよね。そういう余った単位も、地域に住む必要な人に譲る制度ができたらいいな、とかもう少し融通が利く制度にしてもいいのではないかと思いました。 それからやはり働く方々の待遇面の改善は期待したいところです。いまってケアマネジャーさん1人あたり約30人の介護を担当していると言われているのですが、さすがに無理がありますよね。夢を持って介護の仕事に就いても、家庭を持てないほど給与水準が低いから、結果的に介護の仕事を辞めるという話もよく聞きます。家庭を持っても最低限生活ができる程度には、早く賃金を上げてほしいと思いますね。 ----- 新田恵利 おニャン子クラブ(会員番号4番)で芸能界デビュー、1986年1月1日「冬のオペラグラス」でソロデビュー。2014年秋から実母の介護が始まり2021年3月に在宅での看取りを経験、6年半の在宅介護生活(家族介護者)を終える。その経験を単著『悔いなし介護』(主婦の友2021年9月)にまとめ公刊。現在、淑徳大学客員教授に就任し、介護に関する情報を発信。 文:中森りほ (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)