日本はすでに切れかかっている? 大国にも存在する「賞味期限」
「平成」の時代は、日本の経済が失われた時代ともいわれています。令和になった現在も、経済が他国のように成長する兆しは見えず、「日本はもはや先進国ではない」と言われることもあります。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「戦後日本は、すでに賞味期限が切れかかっているような気がする」といいます。国家や社会の「賞味期限」について、若山氏が独自の視点で論じます。
戦後日本の賞味期限
食べ物には賞味期限というものがある。人間にも、企業にもあるようだ。国家や社会はどうだろうか。このところの国力低下と未曾有の財政赤字を考えると、戦後日本は、すでに賞味期限が切れかかっているような気がする。 さて先般の衆議院選挙は、自民党の勝利、立憲民主党の敗北、維新の会の大勝利というのが一般の見方だ。小選挙区での大物議員敗北が目立ち、世代交代が進んでいるとも思えるが、長老議員が力を誇示し2世3世議員が増える傾向は変わらず、日本の政治が進歩しているとは思えない。自民党の勝利は、トランプ現象に象徴される全世界的保守化傾向がつづいていることを感じさせ、維新の会の大勝利は、議員や公務員の「身を切る改革」を要求する国民が多いことを感じさせる。 しかし、何より重要な、日本人の政治意識の大変化は、ほとんどの党が、台湾海峡をめぐる軍事的緊張に日本が積極参加すること、すなわちある種の臨戦態勢を否定していないことだ。新型コロナウイルスと気候変動の問題に隠れた感はあるが、これは戦後平和主義の画期的変質を意味する。折しも、衆院選公示前後に、中国とロシアの連合艦隊が、日本列島を分断するように津軽海峡と大隅海峡を通過し、日本を威嚇する事件が起きている。日本列島波高しだ。 太平洋戦争の終結から76年の時を経て、日本の戦後平和主義時代は幕を閉じたというべきであろうか。かえりみれば、明治維新から敗戦まで、つまり大日本帝国時代も77年で幕を閉じたのである。