携帯4キャリア8社、災害時の協力体制を強化 首都直下地震や南海トラフ地震への備えも視野に
各社の防災対策 中継伝送路の拡大、可搬型アンテナや予備電源の増強
連携協定の対策となる取り組み以外にも、各社は独自の対策強化を行っている。 NTTグループは、半島部の中継伝送路について、従来の2ルートから3ルート化を進める方針を示した。2025年度末までに完了予定で、特に復旧困難な地域については3ルート化を順次進めている。また、アンテナの復旧が困難な地域にはStarlinkを設置するなど、災害に強いネットワークの構築を進めている。 KDDIは、保有する「KDDIオーシャンリンク」「KDDIケーブルインフィニティ」にStarlinkを活用したau基地局を設置。さらに、鳥羽商船高専と連携し、練習船「鳥羽丸」にも同様の基地局設置を2025年3月までに実現する計画だ。 ソフトバンクは、大規模復旧訓練を社員と協力会社170人が参加して実施している。応急復旧機材の増強も進めており、稼働時間が従来比約6倍のインテリジェントタンク、約12倍のLPガスハイブリッド発電機を導入している。また、従来の可搬型衛星アンテナ293台に加え、Starlinkを約500台増強する計画だ。さらに、避難所の通信確保に向けて、Starlinkと小型無線機を組み合わせた避難所向けシステムを開発し、全国の拠点への配備を進めている。 楽天モバイルは、能登半島地震での経験を生かし、1月16日までに340人体制での対応を実現。移動基地局車を40台配備し、約2週間で応急復旧にこぎつけた。今後は基地局予備電源の延命化として、遠隔制御でMIMO(4×4)を(2×4)に変更し、予備電源を約30%延命する取り組みを進める。また、楽天市場や楽天トラベルの持つアセットも活用し、より効果的な災害対応を目指している。
首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模災害への備えも視野に
2025年1月以降、仮設給油拠点や船舶基地局の運用に関して共同利用訓練を実施予定だ。 将来的な災害対応について、特に首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模災害への備えも視野に入れている。楽天モバイル BCP管理本部 本部長の磯邉直志氏は「1社のアセットだけでは早期の応急復旧は困難。今回の協定はわれわれにとって大きな一歩」と強調する。 また、台風などの予測可能な災害については、事前の準備段階から連携を進めることも検討。被害予測に基づく人員配置や機材の事前配備など、より効果的な対応を目指す。森田氏は「発災時だけでなく、事前の準備段階から各社が持っている情報を共有しながら、よりよい対策を検討していきたい」としている。 連携協定は、タワー会社など通信インフラシェアリング事業者との連携も検討していく方針としている。NTTの森田氏は「災害対応だけでなく、さまざまな社会課題に対して各社で連携して取り組んでいきたい」と意欲を示した。 さらに、今回の協力体制で得られた知見や技術を、将来的には国際貢献にも生かせないか検討を進める考えも示された。 なお、この協力体制は「つなぐ×かえる」プロジェクトとして名称が付けられ、事務局メンバーを中心に活動を進めていく。事業者間ローミングについては今回の協定には含まれていないものの、その状況を見ながら活用を検討していくとしている。
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