携帯4キャリア8社、災害時の協力体制を強化 首都直下地震や南海トラフ地震への備えも視野に
限られた作業時間をいかに短縮するかに尽力 通信環境でも提携
今回の協力体制強化は、能登半島地震での経験が大きな契機となっている。地震発生直後、土砂崩れや道路崩壊、津波により多数の通信設備が被災。基地局アンテナの倒壊、通信ビルの傾斜、地中の管路破損など、さまざまな形態の被害が発生した。 各社は独自の復旧作業を進めながらも、状況に応じて柔軟な連携を実現してきた。NTTとKDDIは海底ケーブル敷設船「きずな」を活用し、陸路での到達が困難だった輪島市町野町沿岸と大沢地区沿岸で船上基地局を共同運用。このとき「きずな」の最上部に衛星通信アンテナを設置し、船上から陸上への通信エリア確保を実現した。 特に半島という地理的特性から、金沢からの復旧作業には長時間を要した。朝に出発しても渋滞で現地到着は夕方になることも多く、実質的な作業時間は限られていた。この課題に対し、各社は知恵を絞って対応。KDDIとソフトバンクは給油拠点を共同利用し、限られた資源を効率的に活用。また通信ビルの空きスペースを活用し、作業員の宿泊場所や資材置き場として運用するなど、前線基地としての活用も進めた。 衛星通信の活用も復旧の重要な要素となった。各社はStarlinkなどの衛星通信を積極的に導入し、地上回線が途絶した地域での通信確保を図った。さらにドローンを活用した中継局の設置や、移動基地局車の展開など、あらゆる手段を組み合わせて復旧にあたった。 避難所への通信提供でも連携が進んだ。4キャリアは避難所ごとに支援を分担し、効率的な通信確保を実現している。例えばソフトバンクは、Starlinkと小型無線機を組み合わせた避難所向けシステムを開発・展開。Wi-Fiルーターを設置することで、全キャリアのスマートフォンをWi-Fiで利用できる環境を整備した。楽天モバイルも同様に、避難所でWi-Fiルーターを活用し、「00000 JAPAN」という無料Wi-Fiサービスを提供。各社が手分けして対応することで、より多くの避難所での通信確保を実現した。 これらの経験を通じて、各社は独自の対策強化を進める一方で、事業者間の連携の重要性を再認識。特に、情報共有の迅速化や、リソースの効率的な活用において、連携が大きな効果を発揮することが明らかになった。今回の包括的な協力体制は、これらの実践的な経験に基づいて構築されている。