三笘薫の突破力を支える、類まれなるキャンセル力。秘訣は“後出しじゃんけん”にあり。
サッカー日本代表のFIFAワールドカップ26アジア最終予選がスタート。日本はその初戦で中国代表に7-0と完勝を収め、上々のスタートを切った。欧州のトップリーグで主力を張る選手たちが格の違いを見せつけたが、なかでも三笘薫(ブライトン=イングランドプレミアリーグ)のドリブル突破は圧巻だった。相手が2人で寄せて来ようと関係ない。左サイドから縦へ、中へ突破し幾度となく好機を演出した。今夜日本時間の25:00から行われるアウェイでの対バーレーン代表戦でも、彼のプレーが突破口となるだろう。三笘のドリブルは、なぜわかっていても止められないのか。試合後の本人のコメントから、その秘密を探る。
今やそのドリブルは紛れもなくワールドクラス
三笘はこの日、左WBとして先発し、後半17分まで出場。1ゴール1アシストと結果を残したが、目を見張ったのがやはりその世界レベルのドリブルだ。左サイドのタッチライン際でパスを受けると、対面のDFを幾度となく抜き去り決定機を創出した。 三笘は世界最高峰・イングランドプレミアリーグでも指折りのアタッカーだ。所属のブライトンでも、そのドリブル突破は大きな武器となっている。圧倒的なスピードや体幹の強さが、彼のプレーを下支えしている。 しかし、ただ速いだけでは相手DFに対応されてしまう。三笘が日頃プレーしているプレミアリーグともなればなおさらだ。では、三笘の圧倒的な突破力の肝はどこにあるのか。スピード、体幹といった要素以外に注目したいのが、その類まれな“キャンセル力”だ。
駆け引きで優位に立つキャンセル力
左サイドのタッチライン際でパスを受けた三笘がまず狙うのは、対面の右SBの裏のスペースだ。持ち前のスピードで縦突破できれば、相手GKとDFラインの間を狙った左足クロスや右足アウトでのラストパス、あるいはドリブルでさらにサイドをえぐってからのマイナスのラストパスなど、大きなチャンスを演出することができる。 だが、対面の相手もプロである。三笘の特徴も頭に入れた上で、当然縦への突破を一番に警戒してくる。ここで効力を発揮するのが、上記のキャンセル力だ。 「ドリブルしているときは、ボールだけでなく相手DFの動きを常に見ています。自分が運ぼうとしたコースに足を出してくるとわかれば、(自分の足が)ボールに触れる直前に(当初イメージしていたタッチを)キャンセルして別の場所にボールを動かします」(三笘薫) 中国戦でも、この「キャンセル」は無数に行われていた。むしろドリブル時はボールタッチする度にキャンセルを繰り返していると言ってもいい。1タッチ1タッチ、ボールを動かしながら対面のDFの所作を読み取り、瞬間的な判断で常に逆、逆を取って抜いていく。対応するDFとしては必死についていくものの「だんだん抜かれていく」ようなイメージだ。 中国戦の前半42分、相手DF2人に寄せられながらも縦に突破していったシーンはその典型だ。最初に横から寄せてきた20番シェ・ウェンノンに対しては入れ替わるようにカットインする……と見せ掛けてキャンセルして縦へ。続いて立ちはだかった15番のヤン・ゼシャンに対しても、一瞬スピードを緩めてグッと中に切り込む体勢に入っておきながら、ヤンがそれを読んでやや重心が内側寄りになったのを見逃さず、瞬時にキャンセルしてやはり縦へ突破。完全に抜き切るには至らなかったが、ラストパスを供給するには相手より半身分でも前に出てパスコースが作れれば十分だ。ニアに走り込んだ守田英正へ左足で低く速いクロスを送り込み、チャンスを演出した。