衆院選の「当落予想」はなぜ“当たらない”? “現行の選挙制度”の下で自分の票を生かす「効果的な投票行動」とは
どの選挙制度を採用しても変わらない「議会制民主主義の本質」
このように、小選挙区制を中心とした現行の選挙制度には、長所と短所の両方が指摘される。特に、死票の多さと、一政党が実際の得票率を大きく超える議席を獲得する可能性があることは、心に留めておく必要があるだろう。 三葛弁護士は、どのような選挙制度をとるかにかかわらず、国会で充実した議論が行われること、少数意見が尊重されることの重要性を強調する。 三葛弁護士:「民主主義の本質は多数決だけではありません。そこに至る過程で、充実した議論が行われることが大前提です。 多数派が正しく、少数派が間違っているとは限りません。また、課題ごとに多数派と少数派が入れ替わることもあります。互いの言い分に耳を傾け、議論を行うことで、補い合い、一致点を見つけ出し、物事を決めるのが議会制民主主義です。 自分がいつ少数派になるか分からないのが世の中です。利害関係が複雑化しているからこそ、常に多数派が多数派であり続けるわけではないことを自覚しなければなりません。 だからこそ、 “議論”によってよりよい結論を求める。少数派にも配慮する。それによって民主主義が強くなります。多数派が独善的になり、少数派をギロチン送りにしていたら民主主義がどうなるかは、歴史が証明しています。 報道ではどうしても『与野党の対立』が誇張されがちで『分断』が深刻化しているように見えますが、実際はそれほどでもありません。多くの課題については、議論して一致点を見つけ出し、物事を決めています」
「小選挙区制」中心の現行制度下で投票行動を決めるための“ポイント”
以上を前提として、現行の「小選挙区比例代表並立制」の下で、どのような投票行動をとるべきか。 三葛弁護士は、「小選挙区制だから」といって、過度に「戦略的な投票」を心がける必要性は乏しいと指摘する。 三葛弁護士:「小選挙区制は死票が多いと言われます。しかし、現行制度では、その弊害を緩和するための『比例代表選挙制』が、議席数が少ないとの指摘はあるものの、並行して採用されています。 小選挙区の立候補者が比例代表選挙区に重複立候補している場合には、得票率によっては『復活当選』の芽もあります。 『死票になるのを避けたい』などとあまり考えずに、自分の政治的信条に忠実に投票することをおすすめします」 そのうえで、2つの『評価軸』を挙げる。 三葛弁護士:「第一は、自分が大切にしている政策とのマッチ度という評価軸です。 この点については、毎日新聞の『えらぼーと』や朝日新聞の『ボートマッチ』など、マスメディアが各候補者にアンケートをとって公表しており、参考になります。ただし、どうしても選択肢が両極端になりがちで、その候補者の意図を必ずしも反映していない場合もあります。 選挙公報や、各候補者のHPや街頭演説での発言内容などをチェックすることをおすすめします。 第二に『この候補者だけは絶対嫌だ』という評価軸も考えられなくはありません。その候補者の掲げる政策が自身の政治的信条と真っ向から反するとか、過去の言動や不祥事が許せないとか、どうしてもその候補者を当選させたくないのであれば、最も有力な対立候補に投票するという選択肢も有り得ると思います。 いずれにしても、選挙は、私たちが『主権者』として意思表示を行う数少ない機会です。選挙期間中、候補者が必死になる姿を見るのは、民主主義のありようを考えるきっかけになります。ぜひ、街頭演説を見に行くことをおすすめします」