与党惨敗で政治情勢は不透明 日銀の利上げシナリオ【Bizスクエア】
■日銀 利上げへ前向きな姿勢? 「時間的余裕」の表現は不要 10月31日の日銀の金融政策決定会合。中身は予定通り現状維持だったが、植田総裁の発言に注目が集まっていた。会見で「経済・物価の見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」「時間的余裕を持って見ていく表現は不要になるのではないか」「普通の金融政策決定のやり方に戻る」などの発言があった。 ――これはどういうことか? 東短リサーチ 社長 加藤出氏: 一つに時間的余裕という表現。8月5日の株価急落で日銀が狼狽したところもあり「利上げ急いでませんよ」というメッセージを強く出すための面もあったが、またアメリカ経済の動向に少し不安もあり、いろいろ混じってその表現を使っていたが、さすがにもういいかと。アメリカの方もしっかりしているということもあり、さらに為替が153円とか来ていたので相変わらず、ずっと「時間的余裕」と言い続けると、さらに円安に行くのでこの辺のタイミングで外しておこうということだったのだろう。 ――利上げはしないという印象を与えたことをやめますということか。 東短リサーチ 社長 加藤出氏: あまり引っ張るとその表現をやめた瞬間に、利上げだなとマーケットが思うのでそういう強いシグナルにならないようにするためにも、少し早めにやめておこうということだろう。 これ以外にも、植田総裁のいくつかの発言を見ると結構強気だ。例えば「国内の賃金・物価は見通し通り」「アメリカなど海外は霧が晴れつつある」「賃金は2%の物価目標と整合的な範囲」「個人消費は緩やかに増加傾向」。 ――言っていることはこれまでのスタンスと変わらないが、全部合わせてみると、全てがうまくいっていると。逆にうまくいっていないことは一つも言ってない。と意外に利上げを近くやりたいと思っているような発言。 東短リサーチ 社長 加藤出氏: 経済との関係で言えば本来12月に利上げしてもいいと思うが、ただ8月5日の株価急落は日銀にとってトラウマになっている面もあるので、もう少し慎重にいこうと。 3か月ごとに日銀は「展望レポート」というもので、経済の見通しを出しているが、次は1月に出るので、経済の流れは日銀の予想通り「オントラックで来ている」ということを説明しながら、1月に利上げ決定だと思う。ただ、為替がトランプ当選など大統領選挙の行方次第ではさらに円安に進むと 12月の可能性も出てくる。