BCG流「企業向け生成AI」活用5つのポイント、AI×日本の強みとは?
日本としての勝ち筋
生成AIは、日本企業の特性や産業の強みと相性がよい。活用の仕方によっては、日本が抱える課題を解く大きなチャンスになると私たちは考えている。そのためには国レベルで施策を検討し、企業をサポートしていく体制も欠かせない。日本企業、日本社会に期待されるポジティブな見通しを示したい。
AIと日本が強みとする領域を組み合わせる
生成AIは「日本的コミュニケーション」との相性が良い。日本企業の特徴は、ルールを明確に定めず、いわゆる阿あ 吽うんの呼吸やすり合わせを通じて思案を重ね、きめ細かなサービス提供やモノづくりを行っていくところにある。それは顧客の要求との向き合い方や高い品質管理に表れており、日本企業の伝統的な強みであり続けてきた。自然言語処理が圧倒的に優れている生成AIは、日本特有の「曖昧さ」を含めてアイデアを具現化していく際のよい壁打ち相手となりえ、日本企業は強みをさらに磨いていく道が考えられるだろう。 たとえば、製造業と生成AIの組み合わせという観点で、「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」が注目を集めている。MIは、機械学習や統計分析などの手法を用いて大量のデータを利用し、有機・無機・金属材料などさまざまな材料開発を効率化する取り組みだ。現在は、各社とも特許などの公開データを用いて、開発の過程に生成AIによるシミュレーションを織り交ぜながら新素材を探索する動きが活発化している。 しかし、生成AIの利用は参入の敷居が低い。使用するデータも各社横並びであれば、探索の段階ではほとんど差別化が期待できないことになる。AIを駆使して有望な素材が見つかっても、実験を成功させて製造工程にまで落とし込めなければ、ビジネスとして価値を出すことはできない。探索といった試行錯誤はAIを駆使して効率化しつつ、実験・製造過程や品質・サービス提供では日本の伝統的な強みを活かす方向を見据えておくことが重要だ。 従来型AIやロボットなどのハードウエアと生成AIの組み合わせにも大きな期待が持てる。生成AIが指示出しを担い、物理的な業務を行うところまで進展させられれば、たとえば介護や警護、調理といった業務への導入が見込まれる。そこに、日本企業が強みとする多様なニーズへの対応力が加われば、従業員や顧客にとっての生産性や利便性が一気に向上する可能性がある。