BCG流「企業向け生成AI」活用5つのポイント、AI×日本の強みとは?
ポイント2 学習/トライアルを実施する
新しいテクノロジーは実際に体験してみないと、正しく理解できないものだ。機能が不完全だからと待っていても、いつ最終形が出てくるのかはわからない。今あるものを早期に試して、適用可能性と適合性を評価し、自社にノウハウを蓄積し、判断力を養ったほうがよい。また、AIに関するトライアルからの学習が組織的に集積され、活用の精度を高めていく好循環の構築がカギとなる。 トライアルの際には「安全な砂場(サンドボックス)」が必要になる。情報漏洩やセキュリティ事故を防ぎながら、安全に試行や実験ができる隔離された環境を用意しなくてはならない。 生成AIの活用時に留意したいのが「ハルシネーション」、つまりもっともらしい誤答だ。私たちは、「機械は正確であり、常に正しく振る舞うように制御されている」と思い込みがちだ。そうした暗黙の前提やバイアスを取り払って、生成AIは事実と異なることを堂々と回答する場合があることを念頭に置いておかなくてはならない。 特に生成AIを試す場合には、ただテキストボックスに質問を投げるだけでは期待した答えは返ってこないため、「あまり使えない」という評価になりやすい。そうした落とし穴に陥らないように、明確な目標設定と、ベースとなるプロンプトエンジニアリングや評価検証などの準備をしなくてはならない。
ポイント3 統括組織をつくる
新しいノウハウや知識に関わることなので、活用する情報を1カ所に集め、知見を集約し、ガバナンスを効かせるために、生成AIの統括組織をつくることを勧めたい。よく見られるのが、各部門で個々人が好き勝手に生成AIツールを試すような放任スタイルのやり方だが、これでは企業としてのノウハウが蓄積されない。 また、社内でAIが間違った学習を進めてしまっても、有効な手を打つことができなくなる。活用範囲をやみくもに拡げたり、現場ごとに自由研究活動が立ち上がる状況は避けなくてはならない。 AIへの各取り組みから得た成果を全社へと拡張するためのコントロールタワーとなる中央組織をつくり、技術支援、規制、利用促進、検証、データ管理などの機能を与えて、責任を持って推進できるようにすることが重要だ。