カザフ、ウズベク、ロシア…そしてそこに韓国車と中国車
中国EVが“大陸”を席捲する日
5月中旬、中央アジアのカザフスタン(人口約2000万)を訪問した。韓国の仁川(インチョン)空港から内モンゴルの砂漠を越えて西へ4000キロ。中国の技術を起点とする「もう一つの世界」の広がりをそこに見た。西のウクライナでは砲声が止まないが、ユーラシアにおける通商の潮目は大きく動いている。 「老後4000万円問題」に抱く強烈な違和感…資金運用で国が提案しない「推薦商品」
韓国車がカザフスタンの「国民車」に
白く雪をいただく天山の北麓、アルマティ郊外の工業団地にその自動車工場はあった。韓国現代(Hyundai)の車を生産するため、アスタナ・モーターズ(ヌルラン・スマグロフ氏経営)が新型コロナ禍の2020年に1億ドル(約150億円)の巨費を投じて完成させた(写真)。 23年、この工場から4万9000台の現代モデルが出荷された。 同年におけるカザフスタンの新車市場は約20万台。かつて日本のトヨタや日産が、右ハンドル中古車人気の余勢を駆って圧倒的なシェアを誇っていたのも今は昔。韓国車(HyundaiとKia)が市場のほぼ40%を占めて、「国民車」の地位を築きつつある感が否めない。 そして24年になり、にわかに販売を伸ばしているのが、中国車に他ならない。
中央アジアで中国車の販売が急増
“Changan”(長安) “Chery”(奇瑞) “Haval”(長城)と聞いて、何のことか、すぐにわかる日本人は少ないはずだ。 ところが、ここでは華為(Huawei)や小米(Xiaomi)のスマホと同様、ふつうに知られている。環状ハイウェイに面する好立地にモダンなショールームがいくつも建っている。 驚いたことに、現代自動車の車を生産する工業団地内の隣接地で、それら中国3ブランドの車を生産する巨大工場の建設工事が急ピッチで進んでいた。投資額3.6億ドル(なんと540億円と半端ではない)、敷地面積20ha、従業員数2600人、と現場の計画図にある。 同じくアスタナ・モーターズによる新規事業で、竣工した暁には(25年春予定)、年間9万台の中国車が生産される計画だという。国内市場の大きさを鑑みれば、関税同盟で一体の隣国ロシアへの輸出を想定していることは明らかだ。