カザフ、ウズベク、ロシア…そしてそこに韓国車と中国車
中国の技術を起点とする「もうひとつの世界」
かくしてユーラシアを中国車が席捲する。 中国とロシアの貿易について、アメリカや欧州連合(EU)は、兵器の製造に不可欠な精密加工機械(レーザー、光ビーム、ウォータージェットなど高度な技術を利用した工作機械)やエレクトロニクス機器・部品(半導体など)、光学機器・センサーなどの中国からロシアへの輸出の伸びを、ロシアの戦争遂行能力を助ける行為だとして非難する。 たしかに、そういう一面もあるにちがいない。メディアも、両国間の貿易をそういう視点からしか報じない。 けれども半面、それがすべてでもないのだろう。なぜなら、それらの輸出の伸びは、中国からロシアへの輸出額全体の伸びを大きく下回っているからだ(図を参照)。 統計の詳細な分析はこれからだが、中国による対ロシア輸出の増大は、軍事転用が可能な、いわゆる「デュアルユース」製品というよりも、むしろ自動車や家電、パソコン、スマホなどの民生用製品によるものではないか、と私は見ている。 西側がまさに軍事への転用を懸念するほどに、中国の先端的な微細加工技術は、日本やドイツ、韓国や台湾などのそれに代わり得る水準に近づきつつある。中国の成功を無邪気に讃えるつもりはさらさらないが、中国製品は西側製品に劣らない高い技術に裏付けられていると見た方がいい。 自動車も例外ではない。なにしろ、商品自体が数年前に比べて格段によくなっている(試乗してみればわかる)。中国の工業製品の品質や性能は日進月歩で向上している。 EVバッテリーのグローバルなサプライチェーンの大半も、中国が押さえた。 中国の習近平国家主席がNEV(新エネルギー車)で「自動車製造強国」をめざすと宣言したのは、西のウクライナでマイダン政変が起き、ドンバスで内戦がはじまった2014年5月のことだった。 それから10年が過ぎ、新型コロナによるパンデミックの霧が晴れた今、グローバルな産業の潮目の変化のただ中に私たちはいる。海の向こうの大陸に、中国の技術を起点とする「もうひとつの世界」が確実に形成されつつあるとの思いを新たにした次第である。