カザフ、ウズベク、ロシア…そしてそこに韓国車と中国車
モスクワ時代の元部下たちと邂逅する
最後に、記しておきたいエピソードがある。 アルマティの小じゃれたレストラン・カフェで、「Mr. ニシタニ・・・」と呼び止める声がした。なんとモスクワ駐在時代の元部下たちだった(編集部注:西谷氏は元トヨタロシア社長)。 懐かしい邂逅(かいこう)だったことは言うまでもない。皆、それぞれに年齢を重ねていた。部分動員令が出た2022年9月に祖国を離れた後、知人の伝手を頼って隣国カザフスタンの企業で働きはじめたのだという。カザフ人の同僚たちと談笑しながら、楽しそうにワインを飲んでいた。 かたやウクライナでは激しい戦闘が続いている。たしかにロシアがウクライナへ侵略した。ウクライナは奪われた領土を取り返すために反撃に出た。その限りで正義がウクライナにあることは火を見るよりも明らかだ。 だがしかし、事そこへ至るウクライナの政治に問題がなかったわけでは決してない。その点ではゼレンスキー大統領とて例外ではない。そして犠牲になるのは、いつも国民の命と日常だ。 ロシアとヨーロッパ、ロシアと中国の違いはあるが、狭間の国における政治の舵取りは難しい。ウクライナで暮らす人々のもとに、ふつうの日常が一日も早く戻ることを願って止まない。
西谷 公明(エコノミスト)