「潰瘍性大腸炎」の初期症状・前兆はご存じですか? 長期化すると『大腸がん』のリスクも
現代社会では、お腹を下しやすい方がとても多いそうです。そして下痢が続く方の中に「潰瘍性大腸炎」という病気が隠れている可能性があるそうです。 【イラスト解説】潰瘍性大腸炎の可能性があるサイン そこで「潰瘍性大腸炎」の初期症状や調べるための大腸カメラ(内視鏡検査)について、消化器内科医の河口貴昭先生(河口内科眼科クリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
指定難病 潰瘍性大腸炎とはどんな病気? 下痢や血便が出る人は要注意 初期症状やクローン病・IBSとの違いも説明
編集部: 「潰瘍性大腸炎」とはどんな病気ですか? 河口先生: 「潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)」は、大腸の粘膜に慢性的な炎症がおこり、下痢や血便、腹痛などを繰り返す疾患です。 「大腸」は消化管の中でも肛門に近い最後の方に位置する臓器で、たくさんの免疫細胞や腸内細菌を有し、腸内の異物や外敵が体内に侵入するのを防ぐ「腸管免疫」が発達しているのですが、潰瘍性大腸炎の場合この腸の免疫が暴走して自分の大腸粘膜を自分で攻撃してしまっている状態と考えていただければいいかと思います。 大腸の中でも最も肛門に近い腸管を直腸と呼びますが、潰瘍性大腸炎の炎症は直腸からはじまり大腸全域へと連続的に広がる特徴があります。重症化すると、その名の通り大腸に多発する潰瘍を形成します。 編集部: クローン病やIBSとは違うのですか? 河口先生: 「クローン病」も潰瘍性大腸炎と同様に腸管の免疫が暴走して腸炎をきたす病気で、潰瘍性大腸炎とともに「炎症性腸疾患(IBD)」というカテゴリーに分類されます。 両者の異なる点としては、潰瘍性大腸炎が大腸にのみ炎症を起こすのに対し、クローン病では大腸に限らず、口から肛門までの全消化管に炎症が生じうるという特徴があります。 一方「IBS(irritable bowel syndrome:過敏性腸症候群)」は、腹痛や下痢などが続くのにもかかわらず、内視鏡検査をしても大腸に炎症などの所見が認められない病気で、自律神経のバランスの乱れによる腸管の運動異常や知覚過敏が病態に関与していると考えられています。 潰瘍性大腸炎やクローン病では腸の炎症部位から出血したり、熱が出たりすることがありますが、IBSでは腸の粘膜は正常ですので出血や発熱などはきたしません。 編集部: 潰瘍性大腸炎になるとどんな初期症状が出るのですか? 河口先生: 潰瘍性大腸炎の初期症状は、下痢や腹痛から始まります。はじめは「お腹をこわした」くらいにしか感じない方も多いのですが、「下痢が何週間も続くのでおかしい」と気づくようになります。 大腸粘膜の炎症が悪化してくると、クリーム色のドロっとした粘液が便についたり、便に血が混ざったりするようになり、さらに悪化すると下痢や粘液便、血便が1日に何度も出るようになります。 便意を頻繁に催してトイレに何度も駆け込んだり、トイレから何十分も出られなくなったりもします。 編集部: 生活にも支障をきたしそうです。 河口先生: また、腹痛を繰り返したり、便の出そうな感覚があるのに何も出ずお腹が絞られるように痛むという「しぶり腹」という症状が出たりすることもあります。 ここまでくると大腸の炎症がかなり進行している可能性があり、炎症で体力を奪われたり、出血が続いて貧血になったりすることによって、「疲れやすい」「体重が減少する」などの症状も表れてきます。 編集部: それは怖いですね。 河口先生: それだけではありません。潰瘍性大腸炎を長く患っていると、粘膜にダメージが蓄積されて、大腸がんが生じることがあります(UC-associated neoplasia: UCAN)。 このUCANという大腸がんは通常の大腸がんと比べて発見が難しいため、経験豊富な内視鏡医による定期的な大腸内視鏡検査でのチェックが必要です。 さらに、ケースによっては、関節炎や皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症)、ぶどう膜炎など、腸管以外の臓器にも症状がでることもあります。