レンジローバー・スポーツ 詳細データテスト 増した円熟味 影を潜めたダイレクト感とシャープな走り
内装 ★★★★★★★★☆☆
先代SVRのコントラストがはっきりしていてアグレッシブなサポートを備えたスポーツシートのあとでは、SVのインテリアはリッチで贅沢に感じられ、驚くほどさまざまな色合いが用いられている。 フロントシートはスポーティなルックスで、カーボンシェルがパフォーマンスモデルらしさを加味している。しかし、広くなったキャビンが、想像したよりいかにもパフォーマンスカーっぽさは薄い。SVのエンブレムはあちこちに見られるが、まずはラグジュアリーで、スポーティモデルにありがちなカーボンやアルカンターラのトリムはほとんど見られない。 JLRの実体スイッチに関するミニマリスト志向は、このクルマにも明らかだ。センターコンソールは、シフトセレクターとスタートボタンくらいしかない。ハザードボタンは中央の送風口の間に隠れていて、見つけるまでに多少の時間がかかった。 しかし、堅苦しくて味気ない内装ではない。JLRいうところのボディ&ソウルシートは、スピーカーとレゾネーターを内蔵し、音楽の低周波数を振動として背中に伝えるよう設定することもできる。 ところが、ステアリングホイールの下部にあるSVボタンを押すと、ムードは一変。デジタルメーターは凄みのある赤系の色合いになり、車高が下がるのが感じられる。 前後席のスペースについては、ライバルに肩を並べるか上回るか。とくに、後席は大人が乗るにも十分な広さがある。かなり高いルーフの下には、大きくスクエアな積載エリアがあり、SUVクーペの類より実用性が高い。
走り ★★★★★★★☆☆☆
先代SVRのV8が放つエキゾーストノートは、もっともワイルドなモードにすると、高速道路で400mくらいまで近づいたら、先行者が道を開けてくれそうなほどだった。しかし、大きな変化を遂げたSVは、少なくとも多少はおとなしくなっている。 威圧的なスーパーチャージャーユニットに代わるのは、やや音が高くなったV8。攻撃的で刺々しい性格はトーンダウンし、均質でメロディアス。ただし、作られたような音になっているのは、エミッション規制強化の影響を否定できない。 このツインターボV8、デリバリーのスタイルと広さは豊かだ。回転はよく、望めば7000rpm以上まで回り、スタンディングスタートや低いギアでの加速は掛け値なしの凶暴さを感じさせる。 ローンチコントロールでの発進は、スムースで高級車的とは言えない。ボディは思い切りリアを沈ませることはないが、一連の自動変速は素早く、頭が後ろへ押し付けられる。パフォーマンスカーにトルクコンバーター式トランスミッションを搭載することは珍しいが、ドライブラインの明らかなテンションやフリクションは、LSDの効果もあって、はっきりと感じられる。 もちろん、トラクションや前進する勢いは有り余るほどで、不足を感じることはまずないだろう。しかし、0-97km/hは3.9秒で、先代SVRの4.4秒は凌ぐが、3.5秒を切るポルシェやランボルギーニ、さらに速いEVも存在するクラスで、ライバルと見比べてしまうと物足りない。48-113km/hも同様で、ウルスが2019年に2.8秒だったのに対し、3.2秒にとどまった。 しかしながら、このパワートレインの強みは、速さそのものより順応性だ。SVモードでは、各ギアをホールドする時間が長くなり、コーナーに近づくとエンジンがオーバーランして、明らかにスポーティな感覚を味わえる。 もっと穏やかに走らせる場合には、すばらしくなめらかで従順。オフロード向きのモードでは、パワートレインのコントロールとレスポンスがやや緩くなるが、駆動力の細かいマネージメントにより、ちょうどいいくらいに調整される。