レンジローバー・スポーツ 詳細データテスト 増した円熟味 影を潜めたダイレクト感とシャープな走り
使い勝手 ★★★★★★★★☆☆
■インフォテインメント 周囲にショートカットボタンが一切ないので、レンジローバー・スポーツSVのPivi Proインフォテインメントシステムに用いられる13.1インチのタッチ画面は広い範囲を機能に割いている。 その働きは上々。使いやすい操作バーや常時表示のスライダー空調コントロールが、真っ当なユーザビリティをもたらしている。それでも、ヒーター操作などは実体式のほうが使いやすく、運転中の集中力が削がれることもないと、われわれは考える。 標準装備される、1430Wで29スピーカーのメリディアン・シグネーチャー・オーディオシステムはみごとなサウンド。ボディ&ソウルシート、略してBASSを作動させなくてもだ。BASSは内蔵した2つのスピーカーと4つのトランスデューサーにより、バイブレーションを増加させる。 反響のプログラムには、心拍数を上げるものと下げるものが用意されているが、単に聴いている音楽に合わせてビートを刻むこともできる。だが、このシートは目新しいだけに感じられるところもある。ほとんどのテスターはあまり長く試さないうちに切ってしまい、健康状態に大きな違いがあったという意見は皆無だった。 ■燈火類 デジタルLEDヘッドライトは標準装備で、イメージプロジェクション機能を備える。ハイビームは明るく、自動減光は素早いが、市街地の狭い道などでは、対向車が眩惑しそうなことも少なくない。 ■ステアリングとペダル ペダル配置はバッチリ。幅広いステアリングコラムの調整範囲と相まって、快適性とサポート性に優れるドライビングポジションをもたらしてくれる。
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
このレンジローバーの新顔が目指そうとしているクルマ像は、数え忘れてもしかたないくらいさまざまだ。それほど多くの役柄を、指先ひとつで切り替えようというのである。 まずはラグジュアリーさを誇示する街乗りSUVだが、それが楽に長距離移動をこなすGTになり、さらには峠道を天才的に駆け抜けたり、高速道路を威圧的に走ったりもできる。さらに、ほかの使い方も思いのままにしようというのだ。 こうした順応性は、最新のパフォーマンスSUVにありがちなものだ、と思うかもしれない。しかし、ほかのブランドには、ランドローバーが見せるような頑強さや使いやすさがあまり見られない。もしくは、それらが走りの独自性において、ランドローバーほどキモになっていないというべきか。 あえて言うなら、SVのオンロードでの乗り味やハンドリングには、たくましさや緩慢さ、重さが常につきまとう。突如として重量を500kgほど振るい落としたかのように、スーパーセダンのようなコーナリングをして見せる俊足SUVではない。つまり、ポルシェ・カイエンやアストン・マーティンDBX707とは毛色が違うのだ。 SVモードはたしかに、やや硬くてガッシリした感じを生み出す。なめらかで手頃な手応えの扱いやすいステアリングは、重くて攻撃的になり、ドライバーとのやりとりが増す。乗り心地は突如として、それまでは、なるべく乗員に感じさせないよう努めていた路面とのコンタクトを伝えるようになる。 ボディコントロールは、大きな入力に対してやや過敏になり、完全にフラットな姿勢を保つことがほとんどなくなる。しかし、ダンピングシステムは、いやがおうにも出てしまいがちなボディの動きを、素早く修正してくれる。 タイトコーナーをホットハッチやスポーツカーのように攻めたい気持ちにしてくれるには、絶対的なメカニカルグリップだけでなく、鋭いシャシーバランスやハンドリングの俊敏さも足りない。とはいえ、このサイズとしては、なかなか立派な走りっぷりだ。ダンピングがしっかり効いていて、飛ばしても安心感があり、2点間を高速移動するのにも十分な精確さが感じられる。 とはいえ、無理に攻めた走りをするには、とにかくあまりにも重いし、ボディは動きすぎるし、慣性も大きくはたらく。このクラスでハンドリングのトップを競うには、アクティブトルクベクタリングの効果も、パワーオンで旋回しようとする積極性も不足気味だ。アミューズメントはあるのだが、それがとくに際立っているといえるほどではなかった。