カドカワには「メリットがはっきり見えない」ソニーの買収提案、そのウラに「生き残りをかけた事情」ありか
業界の警戒感は高まる
ソニーグループがKADOKAWAの買収に向けて協議中、11月19日にそんなニュースが報じられ、国内外のエンタテイメント業界を衝撃が走った。 【写真】コスプレイヤー・えなこの「美ショット」が満載…! かつては電機機器で世界に馳せたソニーだが、現在は世界的なエンタメコングロマリットとしての存在感が大きい。何しろプレーステーションを抱えるゲーム部門、グローバルメジャーの一角を占める映画、音楽、さらに成長著しいアニメ、いずれもが世界トップ企業だからだ。 そのソニーが国内総合エンタメ大手のKADOKAWAの買収に動くとなれば、国内外のライバル企業も心穏やかでないはずだ。 ソニーグループは経営計画でエンタメ分野の成長とIP価値最大化に投資をすると表明しているから、今回もその一環と見ていい。また現在でも、KADOKAWAの株式の約2%保有するなど、資本のつながりもすでにある。 ただ、それだけではソニーが買収を検討する理由は弱く見える。 もちろん大ヒットゲーム「ELDEN RING」や社会的な現象にまでなったアニメ「【推しの子】」といった有力コンテンツがKADOKAWAにはある。それらを加えることで、ラインナップを増やして事業を大きくすることは出来るが、いまでもソニーのゲーム、アニメで十分強い。あえてそれらを吸収する必要は大きくない。 逆にアニメでは、年間40本を越えるタイトルを製作するKADOKAWAといまでも強力なソニーグループが一緒になれば、業界の他プレイヤーからの警戒心が増す。それはソニーやKADOKAWAにとってよいことでないはずだ。
メリットがはっきりと見えない
それでもソニーにとって魅力があるのは、出版の存在だ。国内の出版社は、漫画や小説などの原作提供を通じてエンタメ業界に大きな影響力を持つ。しかし、講談社、小学館、集英社と大手はいずれも独立している。 KADOKAWAは漫画出版では3社に及ばないが、ライトノベル分野では業界トップ。ライトノベルは、いま漫画と並んでアニメや映画、ドラマの重要な原作となっている。ソニーはKADOKAWAを通じて、エンタテイメントの中核となる原作を手に入れることが出来る。 もし買収が実現すれば、ソニーグループには「映画」「音楽」「ゲーム」「アニメ」そして「出版(マンガ・ラノベ)」が並びエンタテイメント事業はより強化される。 KADOKAWAにとって、買収されるメリットは何なのであろう。実はここがはっきりと見えない。もちろんソニーと組むことで、より大きなグローバルビジネスを目指すことは出来る。 たとえばアニメ業界はいま、業界が成長するなかで大手企業のパワーゲームの様相を呈している。ソニーやバンダイナムコ、東宝などが周辺企業を巻き込むことで急速に巨大化している。これに対抗するよりも、むしろグループとして連携するとの選択はある。 ただ出版を除けば、KADOKAWAの映画、ゲーム、アニメの各部門はソニーグループの同じ事業部門より規模が劣る。両社で協力するにしても、強い立場とは言えない。