防衛費、過去最大の8兆5千億円に 5~7年度で43兆円の62%積み上げ
令和4年12月に策定した防衛力整備計画の3年目となる令和7年度予算案の防衛費は、前年度比9・7%増で過去最大の8兆4748億円となった。同計画で定めた、9年度までの5年間で防衛力の抜本的強化に必要な事業費43兆5千億円のうち5~7年度で62%を積み上げた。ただ、円安や物価高騰で主に輸入装備品の単価が上がり、計画数量を調達できない恐れもあり、今後、防衛費の更なる増額を求める声が強くなる可能性がある。 7年度予算案では、石破茂首相肝いりの関係閣僚会議がまとめた基本方針に沿って、自衛官の処遇改善に4097億円を付けた。 反撃能力(敵基地攻撃能力)に使用する長射程ミサイルの量産に着手する。国産の12式地対艦誘導弾の射程を延ばす「能力向上型」(艦艇発射型)の取得に168億円を計上した。長射程ミサイルを活用して敵の侵攻を防ぐ「スタンドオフ防衛能力」に不可欠な、複数の小型衛星で目標を捕捉する「衛星コンステレーション」の整備費2832億円も盛り込んだ。 政府は防衛費増額の財源のうち約1兆円を増税で賄う方針で、法人税とたばこ税は8年4月からの実施を決めた一方、所得税の開始時期決定は先送りした。財源が定まらない中、7年度予算案では単価の精査や一括調達、長期契約など効率化・合理化によって2653億円の縮減を見込む。政府の5年度決算では、防衛費で1300億円程度の使い残しもあった。 自民党の国防族重鎮は、43兆円について円安などの影響によって「実質1兆円程度の減額になる」と指摘。「予算縮減や未使用額を活用すれば43兆円に収まる見通しだが、本当に足りなくなれば、政府を動かさなければいけない」と話す。