こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】誰も知らないブーンベースの3列7人乗りミニバン[ルミナス]がフリードになれなかった理由
■200万円を切る価格でミニバンに必要な機能と性能を追求
コンパクトとはいえ、ミニバンであるからには心地よくドライブできて、安全であることも重視される。走りついては、低・中速域での豊かなトルクと高速域でのスムーズな加速性能を両立した1.5L 3SZ-VEエンジンの搭載をはじめ、ロングホイールベース、ワイドトレッドによって優れた加速性能や走行安定性能を実現している。 街なかでのキビキビとした走りから高速走行まで、さまざまなシーンでゆとりのあるドライブが楽しめた。そのうえで10・15モード走行燃費は15.6km/L(2WD車)を達成し、まだハイブリッドが主流になる以前の新車のなかでも優れた経済性と環境性能を実現していた。 ファミリーカーとして家族の誰かが乗っても安心かつ快適に運転できることにもこだわっている。ロングホイールベースの採用とボディの四隅にタイヤを配置したこと、さらに空気抵抗の少ないスタイリッシュなフォルムも走行時の安定性にも寄与している。 安全性については現代のクルマのような全方位で安全運転を支援する機能は備えていないが、横滑り防止装置のVSCをはじめ、コンパティビリティの概念を取り入れた衝突安全ボディを採用。万が一の衝突時にはサイド、カーテンシールドエアバッグによって乗員を保護する能力が高められている。 コンパクトカーをベースにしながら、7人乗り3列シート車に求められる利便性を追求し、日常利用に十分な機能・装備を採用しながら200万円を大幅に下まわる153万5000円から、というリーズナブルな価格設定としたことも注目された。しかし、コストパフォーマンスの高さが販売に直結することはなく、ブーンルミナスは約3年の販売期間に、マイナーチェンジはおろか一部改良すら実施されていない。 ミニバンクラスは箱型ミニバンを定番としながら、走りのよさを追求したストリームやオデッセイ、スタイルのよさを強調したウィッシュ、ユニークな作りで独自性をアピールしたラフェスタやエクシーガなど、箱型ミニバンに対抗でき得る要素を持ち合わせたモデルが市場で一定の支持を集めていた。しかし、ブーンルミナスはロールーフミニバンを選ぶユーザーから支持を得ることは叶わなかった。 3列シート車は欲しいが、小さなミニバンでは用を成さないと考えるユーザーが多かったことが影響したのかもしれない。しかし、ユーザーをファミリーだけに特化せず、女性を意識して作り込むなどの画期的な試みは、今になって思えば高く評価できる一台だったといえよう。