出撃後ほぼ「全滅」日本海軍潜水艦の最大欠点、攻撃をかわす長時間潜行が可能な空調があったら
これは50年前に、鳥巣建之助さんという方がまとめている。元潜水艦部隊の参謀として、海上自衛隊OBなどが加入している「水交会」の会誌『水交』などで、日本潜水艦作戦の失敗について書き尽くされている。 現在において、これは海上自衛隊における反面教師でもある。潜水艦は敵国の後方撹乱と戦力分散の強要に用いる。整備方針もそれに最適化させている。活動も艦長一任とする。これはすべて日本海軍の失敗を踏まえた方針である。
■潜航こそ最大の防御 ただし、どちらかといえば日本潜水艦が活躍できなかった原因を述べたにすぎない。日本潜水艦は戦果を挙げられなかった。対してアメリカ側は日本潜水艦をよく攻撃できた。それを説明する材料でしかない。 潜水艦のことごとくが沈んだ理由からは、実はやや離れた説明だ。いずれも日本潜水艦がアメリカ海軍の攻撃をかわせなかった、逃げ切れなかった理由でもないからである。 では、その理由はなにか。 それは、潜航状態を長く続けられなかったためだ。水中活動時間が短すぎたため、アメリカの駆逐艦や航空部隊の攻撃をかわし続け、逃れ切るまでには至らなかった。
潜航すれば、日本潜水艦でもアメリカ海軍の攻撃は回避できた。浮上状態で見つかっても、攻撃を受ける前に潜ってしまえば簡単には沈められなかった。 今でもそうだが、ソーナーには確実性はない。当時、水中にいる潜水艦の発見は今でいうアクティブ方式のソーナーに頼っていた。駆逐艦から音を出し潜水艦から反射して戻るのを探知するやり方である。ただ、原理的に探知不能の状態も発生する。また当時の技術水準から探知距離もあまり長くはなかった。
しかも、午後には利きが悪くなった。理論の説明は省くが、昼間の日差しにより海水温が上昇するためである。 海表面から始まる温度上昇がソーナーの深さまで達すると、潜水艦は探知できなくなる。当時の駆逐艦は、午後になるとそのような状態に達した。 潜水艦の騒音探知も容易ではない。駆逐艦は聴音機、今でいうパッシブ式ソーナーも装備していた。ただ、当時の駆逐艦は小さいため聴音機と騒音源の距離は取れない。駆逐艦自身のエンジンやスクリュー音で聞こえなくなる事態が生じていたのだ。