返礼品競争が過熱 ふるさと納税発案の福井知事が語る「本来の趣旨」
東京は「損している」ということではない
ふるさと納税に対しては、都市部の税収が地方に「流出」しているとの批判もある。例えば東京都の住民税の控除額(2018年度)は約645.8億円と、前年比で約39%増加。都は「応益原則(行政サービスの受益に応じて税負担すべきという考え方)に反する」と問題視する。 こうした指摘に対し、西川知事は「若者は地方での投資を背負って東京に行っている」と反論する。 東京23区へは地方から約6万人の流入超過がある(2017年)。福井県の試算によると、東京側の年間の受益額は約1兆6000億円に上るという。内訳は、負担しなかった教育費(6万人×1800万円=1兆円強)と、将来の住民税総額(6万人×1000万円=6000億円)で、合わせて約1兆6000億円。 「これらはすごく大きなお金だが、リュックで背負って上京するわけではないから見えない。でもふるさと納税は金額で見えるから、大都市が損しているように見える。ただそんなことはない。損をするということではなくて、みんなで助け合って、都市から地方に自然に税源を戻している制度だと思ってもらえればいい」
国の法規制の動き「残念」自治体も「節度を」
スタート直後は受け入れ額が100億円前後と低空飛行を続けてきたふるさと納税だが、ここ4年は右肩上がりだ。2014年度の約389億円から15年度は約1653億円とジャンプアップ。さらに16年度は約2844億円、17年度には約3653億円と、実に10倍近い伸びを見せた。 それにはいくつかの要因が考えられる。まず2015(平成27)年に2つの制度改正があった。ふるさと納税の控除限度額が税額の1割から2割に拡大され、5つの自治体までの寄付なら確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」が導入された。それまでより便利に、より簡易にふるさと納税が利用できるようになった。 そして、何といっても返礼品だ。制度開始から数年後には、自治体の返礼品などを紹介する「ふるさと納税サイト」も登場。寄付をしてくれたお返しに自治体から送られる“特典”の豪華さやお得さに注目が集まった。こうした自治体の「返礼品競争」は徐々に過熱していき、2015年には電子マネーや買い物に使えるポイントなどを返礼品としてうたうケースが出て、「制度の趣旨に沿わないのではないか」などと賛否を呼んだ。 総務省は2015年以降、「換金性の高いプリペイドカード」などは返礼品としないことを求める通知を出している。そして今年、冒頭の「調達額が寄付額の3割を超える」「地場産品ではない」場合には、税の優遇対象から外す方針が表明されたのだ。 西川知事は、地域の特産品を全国にアピールしたいという自治体の思いは大事だとしつつ、返礼品はふるさと納税の制度そのものに組み込まれているものではないと指摘する。「寄付した人の税金を控除するという寄付税制で、関連はあるが、本来は制度の『外側』にある話」。 国による法規制の動きに対しては、「残念であり、あまり適切ではない。でも地方側も一定の節度が必要だ。規制は避けたいが、そのためにはどうしたらいいのかというのが頭にある」と、あくまで自治体が創意工夫や自主性を発揮していくべきだとした。