「らしさ」に縛られる男たち。根強く残る男性優位な社会構造は、逆に男性を苦しめている…2000人の声から浮かぶ「今」
南日本新聞「こちら373」は国際男性デー(11月19日)に合わせ、「男らしさ、女らしさ」に関するアンケートを実施した。男性に男らしさが必要かを尋ねると、女性より男性が「必要」と感じる傾向があった。「男ならできる」など「らしさ」に基づく差別や偏見について、男性の2人に1人が感じた経験があると回答。専門家は「男性優位な社会構造は女性だけでなく、男性も苦しめている」と訴える。 【写真】〈関連〉「男性に男らしさは必要?」などアンケート結果をグラフで見る
男らしさが「必要」としたのは男性が79%、女性は71%だった。男性に男らしさを求めた経験が「ある」のは女性が62%で、男性の47%を15ポイント上回った。 京都橘大の浜田智崇准教授(男性心理)によると、「責任のある役職に就くのは男性」など従来の「男性が優位な社会」では、男らしさが経済的な安定と結びつきやすい。男性が家計の柱となれば、女性も経済力を求めざるを得ない。自身の男らしさが脅かされないよう女性に「男性をたてる女性らしさ」を求める傾向もある。 アンケートでは、「らしさ」に起因する差別や偏見を半数近くの男性が感じるとした。具体的な差別や偏見について「『男だろ』『男ならできる』と言われる」「男は仕事、女は家庭」「跡取りは男性がなるべきだ」との回答が目立った。 浜田准教授は「男性間の格差が広がり権力や財力のあるわずかな男性以外は、『男性優位なはずなのに恩恵がない』という剝奪感や『何か成し遂げなければ負け』といった重圧を感じやすい」と指摘。「男性優遇の解消は、重圧からの解放や性別に縛られない生き方の選択につながる。女性だけでなく男性にも利点が多い」と話した。
◇ アンケート結果によると、全体の7割が男性に男らしさが「必要」とし、求めた経験があると回答。半数超が「らしさ」に基づく差別や偏見を感じた経験があった。 11月22~24日、ウェブ上で実施、10~90代の2057人(男性1034人、女性985人、その他・答えたくない38人)が答えた。 男らしさは「やや必要」が53%で「とても必要」を含めると74%を占めた。女らしさの「必要」は73%だった。 身の回りで「らしさ」に基づく差別・偏見を感じた経験は「ややある」が43%で、「かなりある」と合わせ57%だった。男女別では「ある」と回答した女性は67%で、男性の47%を大きく上回った。 男性に男らしさを求めた経験が「ある」は54%、女性に女らしさを求めた経験は49%だった。女らしさを求められたと感じた経験のある女性は56%で、男らしさを求められた経験のある男性37%を19ポイント上回った。
「らしさ」の概念が行動に影響を「与えている」としたのは男性60%、女性61%で男女で差はなかった。 男らしさを感じるものとして挙がったのは「弱い存在を守る」「リーダーシップがある」「経済力がある」が多く、女らしさは「気遣いができる」「家庭的」「優しい」が目立った。 アンケートは多様な声を聞くのが目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる
南日本新聞 | 鹿児島