損害は年間130億ドル──深刻化する海洋プラごみ、再利用に乗り出した人たち
福井県内の海沿いの地域では年に数回、住民が総出で海ごみを回収しているが、最近はマリンスポーツの愛好団体もビーチクリーン(海岸の清掃)活動をしている。今年6月、この団体とアノミアーナが小浜市で共催した活動では、約20人が集まり、1時間でコンテナバッグ5つ分のごみを無人浜から回収した。 ただ、集めたプラごみのすべてが再利用の原料になるわけではないと西野さんは言う。 「比較的汚れの少ないプラスチックやペットボトルを分けて回収し、再利用の原料にしています。汚れのひどいものや発泡スチロール、漁具や漁網などは自治体と連携して処分しています」
集めたものの、実際に再利用されるプラスチックの量は多くない。サングラスを1つつくるのに必要なペットボトルは1本。アクセサリーの場合は手のひらいっぱいで十分だ。テクノラボには原料を年に4~5回送っているが、1回に送る量は段ボールで4~5箱分くらいだという。 西野さんはこの15年間、小浜市を中心に海の環境保全活動に取り組んでいる。アノミアーナを設立したのは、2016年の出来事がきっかけだった。この年の冬、夏に集めた海洋ごみが漁港に置きっ放しになっていることに気がついた。地元の人に事情を聴いてみると、海洋ごみは福井県外の山の産業廃棄物処分場に運ばれ、埋め立てられることになっていたが、輸送が滞っていたという。西野さんが振り返る。 「私たちは海ごみを拾って、いいことをした気になっていました。でも、集めたごみは、山の処分場で埋め立てられているだけでした。海をきれいにしようとすると、山がごみで埋まってしまうと思うと、どうしたらいいかわからなくなりました」
その後、「アップサイクル」という活動がヨーロッパを中心にあることを知った。アップサイクルとは単なる素材の再利用ではなく、もとの製品よりも価値の高いものを生み出していく方法論。西野さんは、新しい海洋ごみ処理のしくみをつくるために、仲間10人とアノミアーナを立ち上げた。 西野さんたちは、分別せずに埋め立てに使われている海洋ごみを、分別するように福井県や海沿いの市町に提言をしている。 「提言を受けて、小浜市は海ごみの一部を分別処分するようになりました。今後、分別処分を増やすことで処理費用が減ります。さらにリサイクルやアップサイクルを組み合わせることで、再利用するプラごみを増やすことも期待できます」