山口市の道の駅にブランド野菜、作っているのは拒食症経験した22歳…祖母に習った農業「みんなを笑顔に」
山口市・仁保地域で野菜を栽培 須子百恵さん(22)
山口市の仁保地域で自身が育てた野菜に「momoe farm」とブランド名を付け、道の駅「仁保の郷」で毎週日曜日に販売している。小学6年の頃に考案したという商品のロゴは、自身の「ももえ」という名前のアルファベットをトマトやキュウリを組み合わせて笑顔のように並べた。「冷蔵庫に貼っている」という購入者の声に、「愛されながら浸透している」と実感している。 【写真】標高300m「天空の棚田」にほれ込み移住、「自然は厳しい」が景観と集落の暮らしこれからも
幼い頃からこの地で育った。自転車で通学していた高校生の頃、地域から緑が徐々に減っていくのを感じ、「山口市の農地や自然を残したい」と農業に興味を持ち始めた。
転機は高校2年生の秋。体操部に憧れて入部したものの、鉄棒で手の靱帯を負傷した。けがを治して復帰するまでに体重を維持しなければならなかったことから、食事制限で体を絞る日々が続いた。懸命になって過度に食事を控えた結果、拒食症と診断されて入院生活を余儀なくされた。
その頃「サラダなら太らないから食べたい」と思い、最初に口にできたのが野菜だった。「入院したからこそ野菜に興味を持ち、常に体を動かせることのありがたみを知った」
高校卒業後の2021年、自宅の農園で野菜の栽培を始めた。最初は祖母から畑作りを習い、ジャガイモを収穫した。その後は父親が買ってきてくれた農業の雑誌や本を参考に、「かわいい」「きれい」と興味を持った苗を取り寄せては育てた。オクラやインゲンマメのほか、シカクマメやヤマトイモなど作り手の少ないものを含め、現在は計約10アールの畑で一年を通して約60品目を栽培し、出荷する。
手掛けた作物は母親の勤め先の保育園に持って行き、買ってもらうこともある。子どもたちや保護者からの「おいしい」という声やお礼の手紙が心の支えになっている。
普段は山口県防府市の農業法人に勤め、ニンジンやタマネギなどの栽培を担当。自身の農園の管理は帰宅後の夜や土日などで、一人での力仕事もあるが「好きな仕事だからきついと思ったことはない」とほほ笑む。